漏えい自衛官書類送検

四国新聞より。

1等空佐を書類送検 記者に防衛秘密漏らす 自衛隊法違反容疑
南シナ海で起きた中国潜水艦の事故情報に関する「防衛秘密」を読売新聞記者に漏らしたとして、陸上自衛隊警務隊は26日までに、自衛隊法違反(防衛秘密漏えい)の疑いで、防衛省(当時は防衛庁)情報本部の課長だった北住英樹・一等空佐(50)=同本部総務部付)=を東京地検書類送検した。
記者に防衛秘密を漏らしたとして自衛官が立件されるのは初めて。防衛秘密漏えい罪は2001年の同法改正で新設、守秘義務違反罪より罰則が重い。取材を受ける公務員への刑事責任追及は極めて異例で「知る権利」「報道の自由」の制約につながる懸念があり、刑事処分が注目される。
自衛隊法は、情報提供をそそのかす漏えい教唆の罪も規定しているが、警務隊は記者の事情聴取はせず立件を見送った。「通常の取材であれば記者に問題はない」との最高裁判例に沿って、教唆罪は成立しないと判断したとみられる。
警務隊の調べなどでは、北住一佐は05年5月、中国海軍の「明」級ディーゼル式攻撃型潜水艦が南シナ海で潜航中に火災とみられる事故を起こし、航行不能になった事故に絡み、防衛相が「特に秘匿が必要」として指定する防衛秘密に該当する情報を読売新聞の男性記者に漏らした疑い。
読売新聞は同月31日付朝刊で、現場とみられる海域や潜水艦の艦番号などを「日米両国の防衛筋が確認した」などと報じた。防衛省が05年10月、秘密漏えいの疑いがあるとして警務隊に告発し、警務隊は昨年1月、北住一佐の自宅や勤務先を家宅捜索していた。
北住一佐は当時、外国軍の電波通信などの分析を担当する情報本部電波部に所属。ロシアを担当する第五課長で、各種の重要情報に接する立場だった。防衛省は、懲戒処分を検討している。
公務員に対する取材と情報提供をめぐっては、外務省機密漏えい事件の最高裁決定(1978年)が「真に報道目的で手段が社会通念上相当なら正当な業務行為に当たり、違法性はない」と判示。読売新聞は昨年2月、「取材は適正に行われた」とする社内調査結果を公表している。
警務隊は防衛相直轄の独立組織で、家宅捜索や逮捕など警察と同様の捜査権限を持っている。
(引用元:四国新聞2008年3月27日)

次に解説。

漏えい自衛官書類送検 "見せしめ"見え隠れ 知る権利制限に懸念
新聞記者に防衛秘密を漏えいしたとして、幹部自衛官自衛隊法違反容疑で書類送検された。「知る権利」に直結する報道機関への情報提供をスパイ事件並みに摘発し"見せしめ"にする意図が見え隠れする。
問題点の一つは、漏らしたとされる情報が「知る権利」を制限してまで秘密にするほどの内容だったのかが明確ではないことだ。識者は「日本近海での中国潜水艦の事故は国民が知っておくべき内容」と指摘し、秘密にすることで得られる利益は「せいぜい南シナ海での日米の監視体制能力の秘匿」だとする。
仮に秘密に値する情報であっても「時の経過で隠す必要がなくなるものが実は多い」(防衛省幹部)とされ、国民による検証を可能にする公開基準も整備すべきだろう。
情報保全の名の下に事件による萎縮効果が利用される懸念もある。記者の立件は見送られたが、情報提供側の書類送検だけでも、取材に応じることに二の足を踏む空気が生まれ「知る権利」が徐々に規制される。実際、防衛省首脳経験者は「これで内部が引き締まる」と期待感を示している。
防衛省は昨年、イージス艦情報流出事件などで情報管理の徹底を米側から強く迫られたばかり。自衛隊と米軍が高度な秘密情報の共有を拡大するため「日米軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」も8月に発効した。
政府は今年2月、秘密保全のための新法制定を目指す強化策を決定。膨らむ一方の秘密主義に、国民は常に監視の目を光らせなければならない。(共同通信 武井徹)
(引用元:四国新聞2008年3月27日)

前に書いた記事(サンデープロジェクト シリーズ「言論は大丈夫か」)にも関係してくる、情報を提供する側が取り締まられることによって、ジャーナリストが取材をしにくくなっていくのではと心配になってくる事件ですよね。
防衛関連のニュースとしては、こちらも出てました。
軍事目的の宇宙開発に警鐘 防衛研が中国情勢分析 - 47news
防衛交流「中国が利用」…防衛研究所が報告書で懸念 - 読売新聞
また、福田首相は今国会での「恒久法」の成立に意欲を見せている。
福田が恒久法に意欲!+また厭世観による事件が+新銀行東京&国会+soccer,keiba - 日本がアブナイ!
なんかあれだね。現実がどんどんずんどこしていって、「これではもう現状に合いませんから改憲しましょう」というオチが待っていそうでいやなんだよね。この流れで改憲するって、結局米軍に都合よく日本が利用されるようになるだけじゃん、みたいなね。
宇宙基本法も要注意物件ですね。
宇宙軍拡会議に文科省職員出席/吉井議員が批判 - 2008年3月27日(木)「しんぶん赤旗」