グランドプリンスホテル新高輪は拡声器使用禁止区域に立地していた

昨日書いたものに関連しますが、映画『靖国』上映中止が相次いだ件について各新聞の社説では表現の自由の危機だとして上映自粛に反対しています。
映画「靖国」をめぐって - 大野の日常
これも、プリンスホテルの時と同じですね。
世界』2008年4月号に掲載された斎藤貴男プリンスホテルの恐るべき「善意」」という記事は、プリンスホテルによる日教組拒否事件についてレポートしている。プリンスホテル側は「お断りしないままで実施された場合、相当な規模での街宣活動が行なわれることになり、ホテルと周辺の安全・安心が確保されなかった。これ以外に言うことはありません」と語るのみなのだが、事件を取材した斎藤貴男は違和感を持ったようだ。

いや、プリンス側の言い分そのものも、そもそも疑わしくないか。会場周辺もプリンスホテルの広大な私有地なのだから、警察はむしろ有効な警備態勢が敷きやすい。万が一にも病人や受験生に被害を及ぼして、本気で警察の面子を失わせたらどういう報復が待ち受けているのかを、街宣車の主たちはよく知っている。
しかも会場の目と鼻の先にはロシア通商代表部が立地していた。ということは、日教組側は後になって知ったことだが、この一帯は「国会議事堂周辺地域及び外国公館等周辺地域の静穏の保持に関する法律」によって拡声器の使用が禁じられている。だからこそ、自民党は例年グランドプリンスホテル新高輪で党大会を開くのだ。福田康夫首相が今年1月17日、"生活者重視"の党運営を打ち出したのも、この場所だった。
プリンスホテルの頑なな姿勢は、全体集会の予定当日と、準備のために日教組が押さえていた前日の「飛天の間」に、勝手に別の予約を入れてしまったことでもわかる。多々良マネージャーによれば、当日については昨年の12月20日、前日については12月6日に、「通常の宴会セールス活動の結果」、入社説明会に利用する企業などと契約を交わしていた。ちなみに日教組東京地裁に仮処分を申請したのは12月4日のことであり、6日と20日はそれぞれ、第一回と第三回の審尋(民事手続きにおいて、当事者もしくはその代理人などが、意見や主張を裁判所に提出する訴訟行為)が行なわれた当日だった。決着がつく以前の二重契約であると同時に、司法判断など無視するという強固な意志表示だったとも言える。
(引用元:斎藤貴男プリンスホテルの恐るべき「善意」」 『世界』2008年4月号)

「ルーティーンワークが自由を殺す」という副題がつけられたこの記事では「この種の出来事が、2008年の日本には珍しくもない」として、プリンスホテルの件の他に、つくばみらい市のDV防止講演会突然中止、神奈川県教育委員会による国歌斉唱時不起立者氏名収集を取り上げている。特に神奈川県の事例を読んで私の脳は死んだが、取材した斎藤によれば神奈川県だけが特に突出しているわけでもないとのこと。他の地域も似たようなものらしい。記事は「彼らだけを笑う資格が、しかし現代の私たちにあるのだろうか」と結ばれている。詳しくは『世界』2008年4月号をお読みください。