こんぴら歌舞伎 第二十五回

第二十五回『四国こんぴら歌舞伎大芝居』
こんぴら歌舞伎の午前の部を観に金丸座へ行きました。
第二十五回目となる本年は、中村勘三郎が座頭。午前の部は『俊寛』『新口村』『身替座禅』。
俊寛』では、千鳥の動きが部分的にアメリカのアニメみたいになっておもしろい。海女だった彼女をはじめて見たときの様子を成経が語るのを聞いていると、なぜか007でウルスラ・アンドレスが海から出てくるのをジェームズ・ボンドがこっそり見ていた場面を思い出してしまう。俗世間への未練いっぱいの俊寛だけど土壇場では若い人を救い、しかし去っていく船を目で追う様はかっこよくわりきることができないおっさんの心をひしひしと感じさせます。この最後、島からどんどん離れていく船から独り残った俊寛の姿を眺めているような雰囲気がよく出た舞台になっていました。憎まれ役の中村亀蔵は声がいいです。それと船で島にやってきたヒールとベビーフェイスの衣装がプロレス的にわかりやすいのも素敵。
『新口村』は、梅川忠兵衛のおはなしですが、扇雀七之助がきれいで、父親役の坂東彌十郎がうまい。ほんとにもうおじいさんかと思いましたが、プロフィール見ると実年齢はそうでもなくて、老け役なんですね。音楽、浄瑠璃のグルーヴがきます。
『身替座禅』は、右京が中村勘太郎、太郎冠者が片岡亀蔵、奥方玉の井中村扇雀。この玉の井、場合によっては男役ばかりやってる役者がものすごい女装で演じるときもあって、それはそれですごくおかしくて楽しいんですけど、今回はプログラムを読むと、扇雀は「外見はあくまで普通の女性にするつもり」とあって、ほんとにぱっと見はきれいなくらいなんですよ。なんですけれども、でも、出てくると怖いの。なんか扇千景がホラーな時代劇に出てきたみたいで。それと今回気がついたのは侍女二人がけっこう効いてるんですね。なんかいやじゃない、ああいうのが二人後ろでかしこまってると。この狂言は何回か観ていますが、出る人によっていろいろな味わいになるのがわかって楽しいです。
桜はもう満開も過ぎて、若葉が目立つようになっていました。お土産にはこんぴら狗集団代参中のオリジナルフレーム切手『金比羅宮』を買いました。じつは我が家にも一頭こんぴら狗がいます。お守りを首からつってテレビの上から家族を見守っているのです。来年もこんぴら歌舞伎が観られたらいいなと思いました。