ゴシカ

DVDで鑑賞。
意識を失った精神科医が、目を覚ました時、殺人容疑者になっていた。
ミランダ(ハル・ベリー)は、女子刑務所の精神科病棟で働く医師。雨の夜、車で帰宅途中に通行止めにあい、いつもは通らない橋を渡ることになる。橋を通過中、道路上に立っていた少女を避けようとして事故を起こし、意識を失う。気がついたときには、夫を殺害した容疑で刑務所に収監されていた。事故当時のことを思い出し話しても誰も信じてくれない。ミランダは、自分が医師として働いていた病棟に患者として入れられてしまう。彼女は、何が起こったのか突き止めようと動き出す。
レンタル屋では、ホラーのコーナーに置かれていた。幽霊が出てくるので、ホラーになってしまうだろう。しかし、主軸はミステリーで、精神状態がおかしいと見られて何を言っても周りに信じてもらえなくなった女医が、独力で自分の正しさを証明しようとするおはなし。幽霊はギミックと言ってしまいたいけれども、主人公を事件に巻き込み、解決へ向けて手助けする役割も果たしており、オカルト・ミステリーとでもいうしかない作品だった。
女子刑務所が舞台になっているため、過去の女囚ものを連想させる場面が展開される。女子刑務所の精神病棟内は、海の中のような青味がかった緑の色調で、外界から隔絶されて管理されている冷えた雰囲気が漂う。病棟は停電が起きやすい状態になっており、時々電灯がちかちかするのが効果的に活かされている。主人公が脱走を試みる際のハラハラドキドキ逃走劇、警備員に捕まったり、独房内で幽霊と格闘状態になったりと、アクションも重く決まる。ハル・ベリーが圧巻。主人公の心理状態を表情であらわす演技も見事で、彼女が映画を最後まで引っ張っていく。
登場人物の周囲をぐるぐる回り、ときには上からも見下ろすカメラの動きもおもしろい。ホラーなので、幽霊が、その場にいる人の周りを浮遊しながら観察しているような感じがした。
ほんとうのことを言っても信じてもらえない。つい、女性は日常でもそういう立場に置かれることがよくある、と書きたくなったけれども、おそらく男性でも同様のつらさを味わう人はめずらしくないだろう。仲間外れにされ、孤立無援になり、自分のことを判断するものたちが自分を対象物としてしか見ていない場合、誰でもそうなっておかしくないのだから。
ミランダは、冒頭で診察している女囚から、あなたは私の言うことを信じていないと反発される。しかし劇中で、医師だったミランダは、自分の患者だった女囚と同じ立場に置かれる。そして逆境から反撃するのだ。その間にサポートしてくれる人の中にはおじさんもちゃんと入っていたよ。