恐怖のメロディ

DVDで鑑賞。
人気DJが女性ストーカーに悩まされる。
モントレーの人気ディスク・ジョッキー、デイブ(クリント・イーストウッド)は、仕事帰りにいつも寄るバーで、一人の女性に出会う。彼女は彼の熱心なファンだった。自分には恋人がいるんだと説明すると、その女性は私もそうだけど、一晩だけ楽しまないかと答える。そのことばを信じたデイブ。だが、それから女につきまとわれることになる。
デイブを悩ませるイブリンという女性を演じたジェシカ・ウォルターがうまい。にこーっと口をゆっくり横に広げて笑うのに、目のあたりは固く、妙な力が入っているようで、愛想がよさそうなのに妙な印象を受ける。一見普通みたいなんだけどなんか変、怒鳴ると声が太く、男にしては声が細いイーストウッド演じるデイブが相手なので、こわさが際立つ。
この主人公はDJ仲間にからかわれるほど女にもてる男で、恋人はいるものの他の女ともよく遊んでおり、このストーカー化するイブリンにも自分のほうから声をかけている。一夜限りといったのに話がちがうじゃないかとイブリンをなじったりするのに、その場の成り行きでまた一緒に寝たりして、自業自得臭漂う被害者になっていく。
見方によっては女に甘い、女相手に怒鳴ったり暴力ふるったりできない繊細な男性でもあるのだが、状況が悪くなると、いやこれ自分のせいじゃなくて、あなたのせいよ、だって、ぼくはいろいろ考えててだからまだなにもいってないけど、あなたがそうしたいんでしょ、そう決めたんでしょ、そうしちゃったんでしょ、ぐちぐちぐち、と、巨匠になった今でも続く女に対する態度の原型をきっちり見せてくれております。
いや、ま、この映画に関しては、役者として柄にあった役を的確に演じてるだけなんだけれどもね。イブリンはどうみても性格破綻者だし。
巨匠の予感も見せてくれてるんだよね。主人公の家は海の近くに建っているんだけど、その周辺の景色を様々な角度から見せてくれる。波が打ち寄せる崖、崖の上の地面を覆う緑、白い浜辺、波に削られた巨大な岩、海辺独特のくねった形の木々、浜から続く森。主人公が恋人としゃべりながら散歩するのにあわせて、変化にとんだ海辺の景色が観られる。しかも、波の音、虫や鳥の鳴き声が、場面を引き立てる背景音としてまさに自然に響いている。すばらしい。
モンタレー・ジャズ・フェスティバルの様子が見られるのも楽しいです。黒人や東洋人の役者が出てるのも、1971年作品としてはよく出てきてるといえるのかもしれない。
時代劇みたいな場面も出て来てました。いやあ、イーストウッドでした。