湖のほとりで

  • 2007年、イタリア
  • 原題:LA RAGAZZA DEL LAGO/THE GIRL BY THE LAKE
  • 原作:カリン・フォッスム
  • 監督:アンドレア・モライヨーリ
  • 脚本:サンドロ・ペトラリア
  • 出演:トニ・セルヴィッロ、ヴァレリア・ゴリノ、オメロ・アントヌッティ

DVDで鑑賞。
湖のほとりで女性の死体が発見され、殺人事件の捜査がはじまる。
小学生が登校していく光景からはじまる。家を出て、通りを歩き、出会った人にあいさつする子供。二階の窓から子供の姿を眺める人もいる。山間部の小さな町。子供は通りでマリオという人が運転する車に呼び止められ、いっしょに車に乗っていってしまう。
一時は子供が行方不明になったと心配されるが、子供はマリオにウサギを見せてもらったりして遊んでいただけだった。母親のもとに無事帰って来た子供は、マリオといっしょに行った湖のほとりで見たことについて話す。そこには女性の死体があった。
刑事は、殺された女性の交友関係を調べ、犯人を突き止めようとする。
殺された女性は若いホッケーの選手で、人並みより体力もあり、性格も明るい人物と見られていた。しかし、家族やつきあいのあった人に話を聞いていくうちに、被害者とそれを取り巻く人たちのごく普通の生活の中に沈殿する悩みや苦しみが浮かび上がってくる。
ミステリーとしては線が細く、謎解きの興味でぐいぐいひっぱっていくような強さがない。そのかわり、刑事が会う人たちの語りや表情から浮かび上がる日常に埋もれて普段は見えない情景がドラマを彩り、織り上げていく。
おはなしの底流には、障害のある家族を持つ人たちの暮らしがある。主人公の刑事の妻も、進行性の病のせいで家族の顔や名前すら忘れかかっている。世話が大変だった幼い息子を事故で死なせたことを語る女性の顔がだんだんアップになっていく場面では、その女性が抱えていたなんとも言い難い悩みが迫ってくるように感じられた。
舞台となるイタリアの田舎町の石垣や石畳、住宅地からこぼれる緑や花、湖の水面や取り巻く木々の眺めが、美しい。街の通りから戸口の奥を覗いたとき、家の中から窓の外を見たときなど、日本でいえば昔風の町家が残っている街を歩く時を連想させる。
地味な映画だったが、役者が作品のリアリティを支えていた。もうちょっと謎解きの過程に起伏があれば、全体の流れにはずみがついたのではないかと思われる。