『週刊金曜日』と『女性のひろば』に連載中のルポと小説

週刊金曜日』では2011年1月28日号から鎌田慧「残夢 大逆事件を生き抜いた男 坂本清馬の一生」が始まった。初回の結びに、愛犬クロを連れて散歩する晩年の坂本清馬の写真と共に、このルポの狙いが述べられている。獄中23年、無罪を訴え続けたが再審請求はできず、出獄した後1961年にようやく再審の訴えを起こしたものの、1975年に無念のうちに没した坂本清馬。

秋水に師事しながらも対立、離別、反逆と叛骨、妥協なき狷介無援の八九年、その残された夢を通して大量処刑から100年のいま、逆転と反攻の契機を探る。
鎌田慧:次回は2月11日号、以後毎週掲載)
引用元:週刊金曜日2011年1月28日号

大逆事件については、岩波『世界』で2009年に連載されたノンフィクションが本になっている。(田中伸尚『大逆事件岩波書店
その中でも、坂本清馬の愛犬クロと散歩する姿が印象に残ったが、鎌田慧によるルポはその清馬に焦点を絞ることでおもしろい実録ものになるのではと期待される。
週刊金曜日』では、連載中の小説、早坂類「自殺断章」もおもしろい。実際にあった自殺を題材にして創造された小説なので、おもしろい、なんて言い方だと不謹慎かもしれないが、小説という形で自殺する人の内面に触れることで、自殺した人はたしかに生きていたこと、生きて感じて考えていたからこそ自殺したことが伝わってくるような気がする。
『女性のひろば』では佐田暢子「春の日の静かに照るは」が連載中。小学校の教師を中途退職して母の介護と家事に専念している主人公・能里子の胸に、ふいに封印していた退職までの一年間の記憶が甦り始める。これまでを読む限り、主人公は学校での日の丸掲揚や君が代斉唱には反対する立場で、それだけに近年の教育現場での雰囲気の変わりように困惑している様子だ。私は日の丸君が代大好き人間だが、どうしても反発をしてしまうという人のことも読みたいし、小学校教員の内幕ものとしても楽しめそうな展開になっている。
週刊金曜日』も『女性のひろば』も、ところどころにイラストが載っているので、寝る前にそれをぼーっと見るのも好きだ。『週刊金曜日』の「くらしの泉」の鳥獣戯画風のイラストがうれしかったが、次の人にバトンタッチしたのかな、でもそれはまたちがった雰囲気で、ああこの絵柄ならここで出る台詞はこのかんじかな、そんなことを布団のなかで想像するのがいいんだよね。