E.T.

DVDで鑑賞。
地球に取り残された異星人 "E.T." を少年が助ける。
エリオットは、母、兄、妹と暮らす少年。両親が別居し寂しい思いをしている。ある日、庭に入り込んだ不思議な生き物に出会う。なぜか心引かれ、その生き物が孤立して困っていることに気づく。自分の部屋に生き物をかくまうエリオット。やがてお互いに気持ちが通じ合うようになっていく。
その生き物は異星人で、人間から逃れて急いで出発した宇宙船に乗り遅れさまよっていたのだった。エリオットはその異星人を“E.T.”と呼ぶことにする。
エリオットはE.T.を守り、E.T.は自分の星に帰るために準備をはじめるが、E.T.を追う研究者たちはエリオットの家の周りまで来ていた。……
主人公エリオットは10歳くらいか。身長は140センチ足らず、E.T.も同じくらい。彼らの視点に立って周りを眺めたときに見える光景が多く見られる。冒頭の夜中の山中で、E.T.を捕えようと現れる男たちは、腰のあたりしか映らない。小さな子供の目の高さから見るおっさんである。血が流れるわけでもないのにこわい。腰のベルトに鍵がじゃらじゃらしている、それだけでモノモノしく威圧感すら漂う。こういうところがスピルバーグはうまいね。
子供の目の高さといえば、ACの広告かな、BGMがない状態で足音だけが聞こえる中、男の腰のあたりが映り、ちょっと間を置いて、手がテレビ画面中央にすっと差し出される、そしてその手の先に小さい子供の頭が映るCM。あれ、怖くないですか。私はあれ見ると人さらいを連想してしまうのだが。その後女性の姿も映るし、ナレーションを聞いていると、たぶん親が子供といっしょに歩いているイメージなんだと思われるのだが、頭ではそれがわかっていても、見る度にドキッとする。同じ絵でも、ほんわかしたBGMが鳴っていたら怖いとまでは思わなかったかもしれない。あの日常離れした静けさが一瞬の魔の時を感じさせる一因か。
スピルバーグの映画に戻ると、やはり追っかけのシーンが活き活きしているね。チェイスから巻き起こるドタバタのおかしさも自然に盛り上がる。その一方で、教室で理科の授業を受けるエリオットや、家の中のE.T.の、笑いをさそう場面では、ほほえましいのだが笑う場面としてはぼんやりしすぎてるなと感じてしまった。日常の殺伐とした断面を切り取るのは息をするように自在にできるスピルバーグだが、コメディセンスには恵まれていないようだ。
ただし、封切り公開当時、立ち見まで出た超満員の高松の映画館で見た時は、客の反応はすごくよくて、私もいっしょに笑いながら楽しく観た記憶があるんだよな。30年くらい前になるのか。あの映画館はもうない。年齢のせいもあるだろうが、満員の映画館で、客が笑ったり声を上げたり拍手したりする中で観ると、一人で部屋でDVDで観るのとはちがった印象になってしまうんだろう。
少年が異界の者と親しくなることで成長するというおはなし、児童ものの定番かな、『ウォーター・ホース』や『小さき勇者たち〜ガメラ〜』も同種の作品だった。映画全体のテンポは近年作られたウォーター・ホースガメラのほうがずっとよかった。E.T.は30年前の映画だから仕方がない、というよりは、脚本がいまいちな気がしたな。スピルバーグの天才を感じさせる映像は観られるからいいんだけどもね。
出演者では、ドリュー・バリモアのうまさにおどろく。飼い犬になったワンコも名サポート。E.T.よりワンコずっとかわいいです。
それにしても、あのE.T.は、地球に何をしにきていたのだろう。冒頭では山の中で植物採取をしていたが、目的が何なのか劇中では一切説明されない。冷静に考えてみると、地球に対して何を考えているのかまったく不明な異星人なのだ。敵なのか味方なのか単に好奇心が強い観察者なのか。うむ、意外とこわいおはなしだったのかもね、これ。