フィールド・オブ・ドリームス

DVDで鑑賞。
農夫がある日声を聞き、畑の一角に野球場を作る。
1952年生まれのレイ・キンセラは、母親を幼い頃に亡くし、野球好きだった父親に育てられる。父親はレイを野球選手にすることを夢見ていたが、1960年代の若者文化に染まったレイは父親と意見が合わなくなり、カリフォルニアの大学に進学したのをきっかけに絶縁状態となる。そのまま和解することなく、父親は他界した。
大学で知り合った妻との間に娘も生まれ、妻の発案から農場を経営することになったレイだが、ローンが払えないままで農地を手放さなくてはならない心配が出てきていた。
そんなある日、とうもろこし畑を見て回っていたレイは、ある声を聞く。誰の声なのか、天の声なのか。「それを建てれば、かれはやって来る」レイは、自分の直観を信じることにし、畑の一角をつぶして野球場を作る。すると、子供のころあこがれていたが、八百長スキャンダルで消えていったシューレス・ジョーが現れた。
その後も、不思議な声が聞こえ、レイはその声に導かれ、次々と行動を起こしていく。……
夏だから幽霊ものを観たいなあと思い、でも日本の幽霊は怖すぎるからいやだなあということで、この映画を観ることにしました。日本公開当時、映画館で観ているのだが、そのときの記憶として、野球選手の霊が現れるとうもろこし畑がひどく幽玄な印象で残っていて、あのとうもろこし畑をもう一度観たいと思ったのですね。
DVDで再見してみると、記憶してたほどには雨月物語的ではなかったわ。アメリカの田舎の光景、日本よりは空気がからっとしていそうな、そういう景色だった。でも、畑の一角つぶして野球場が作れるくらいですから、とにかく広いんですよ。日が落ちた後の光景は、十分神秘的です。アメリカの映画では、ホラーでもとうもろこし畑がその景観から場面の舞台になることがよくありますね。
天の声みたいなのをそのまま信じる男、そんな男をやさしく信じてくれる妻、物語早々から現れる幽霊に違和を感じないまま家族ぐるみでつきあう主人公。おとぎばなしですね。しかし訴求圏はこの物語の主人公と同年輩のアラフォー男性だと思われます。映画の主人公夫妻は1960年代に大学生で、当時の西海岸の若者文化を満喫する青春時代を送ったという設定になっており、レイの妻が市民集会でいまならティー・パーティーに入っていそうな田舎のおばさんをやりこめたりする場面もあります。中年になったいまも、あの当時のスピリットは忘れていなし、消えたわけではない、そういう思いも込められたおはなしなのかもしれませんね。(私にはそういう人もいるんだろうなという感想しかもてませんでしたが)
まあ年代に関係なく、中高年になってやっと親の気持ちもわかるようになったという人には共感の持てる物語でしょう。私にとっては、とうもろこし畑の映画でした。
ところで、この主人公は野球ファンで、子どもの頃のあこがれの野球選手が重要な役どころとして霊界から現れるのだが、最近亡くなった伊良部選手のことをちょっと思い出してしんみりした。伊良部は、香川県尽誠学園高校にいたこともあって、動向が気になる野球選手だった。伊良部はほんとうに野球が好きで、でも不器用な一面があり、それが災いして損をしてしまう、そういう風に見えていた。もちろんこれは私がスポーツニュースで見た限りでの印象でしかなく、ほんとうはどんな人物だったのかはわからない。しかし、最後まで、子供に野球を教えるような形ででもいいから野球に関わっていたい、そういう思いを持っていたことだけは伝わってきていた。あらためて伊良部選手のご冥福をお祈りいたします。