ソウ ザ・ファイナル

  • 2010年、アメリ
  • 原題:Saw 3D
  • 監督:ケヴィン・グルタート
  • 脚本:パトリック・メルトン、マーカス・ダンスタン
  • 出演:トビン・ベル、コスタス・マンディロア、ベッツィ・ラッセル、ショーン・パトリック・フラナリー、ケイリー・エルウィス

DVDで鑑賞。
説教殺人鬼ジグソウの最後のゲーム。
ジグソウの妻・ジルはホフマン刑事を殺害しようとするが失敗。ホフマンの報復を恐れたジルは自ら警察に出頭し、身柄の保護を求める。警察はジルをかくまうが、ホフマンは警察の元に「ジルを渡せ、さもないと後悔するぞ」と脅迫状を送る。
一方、ボビー・デイゲンという男がジグソウのゲームの生還者として体験記を出版、死の危機を自力で脱した経験が自分を変えたとテレビに出演して語り、全国を回って講演するなど一躍有名人となっていた。しかし、ボビーはある夜何者かに襲われ、意識が戻ったとき、ジグソウが自分に語りかけるのを聞く。「君はウソをついた……」
再び、警察を巻き込んでの殺人ゲームがはじまった!
冒頭、第一作で自ら足を切断した医師(ケイリー・エルウィス)が這っていく様子が映る。自力で止血する痛い場面。どうやらあの医師は生き延びたらしいとわかる。
次に、昼間の街中のショウウインドウに、三人の男女が電ノコに固定されている光景。衆人環視の中でジグソウの罰が三人に下り、映画の中の場面と、残酷拷問が売り物のソウシリーズを観ている私たちが重なりながら、胴斬り腸どろんぱシーンが展開。そして Saw 3D の題名。おそらく劇場ではこの胴斬り場面で飛び出し効果を印象づけたものと想像される。
ソウ・シリーズだが、私は第一作目しか観ていない。二人の男が目を覚ました時、足を鎖で固定され、テープから見知らぬ男の声で脱出するにはどうすればいいかを告げられる。二人は極限状態、一方外の世界では、警察が謎の連続殺人を捜査中で、それが監禁された二人にも関係してくる。
趣向を凝らした仕掛けによって犠牲者を苦しめるジグソウの殺人鬼ぶりはけれん味たっぷりに見え、かたいことはいわずにきゃあきゃあ楽しむのがいいホラーものという印象が強いが、このおはなしはミステリーで、中身も「ユージュアル・サスペクツ」のようなアンフェアなものではなく、絵でつないでしまえる映画の強味を活かしたおもしろさが味わえる作品だった。
後で知ったのだが、「ソウ」を作った監督ジェームズ・ワンと脚本リー・ワネルは、ダリオ・アルジェントの大ファンなのだそうで、そういえば「サスペリア2」を思い出させる楽しさがあったんだよね。「サスペリア2」は、「サスペリア」が日本で対ヒットした後に公開されたのでつけられた邦題で、じつは「サスペリア」とは何の関係もない、刑事が殺人事件の謎を解くおはなしです。映画でなければ描けない推理ものでした。
残虐趣味が売り物のスリラーだけれども、見世物小屋的はったりで客をのせ、音楽と映像の流れでぐいぐい最後までひっぱっていって、終わった後はお化け屋敷から外へ出たような気分になれる、明るいシリーズだったんじゃないかな。作品を支えているのは役者の手堅い演技だとも思ったよ。
それと、あの胴斬りシーンでは、子供のころにみたインド大魔術の胴切断を思い出しましたね。あったんですよ、そういう見世物が。血や内臓がちゃんと出てくるんです。いまでもやっているのかしら。