村上龍「オールド・テロリスト」第十三回 文藝春秋2012年6月号

関口らが遭遇した歌舞伎町の映画館でのテロ予告の文書が各映画会社に送られていたことがわかった。その中には「赤身」「大トロ」など、NHKテロの犯人だと称して自殺した三人の若者の遺書にも出てきた隠語が使われていた。大惨事を目撃したショックから抜け切れない関口、マツノ君、カツラギさんらだったが、一晩休んだ後、近くの寺の境内でどうするか相談をはじめる。するとカツラギが生い立ちを語り始め、関口にとにかく自分のおじいいさんの知り合いに会ってくれと言い出し、電話をするのだが。……
カツラギは、しゃべるとあれなのだが、だまっていると長身の日本的美女ということで、関口は疲れ果てながらも「やれたらなあ……」とごく自然に思ってしまう。こういうところが村上龍ワールドで主役を張る中年男だな。うむ、そうでないとね、村上龍なんだから。
カツラギの語る身の上話は、聞いているマツノ君が唖然とするような内容で、関口もどこまで真に受けていいのかわからない。よく出版されるAV女優の語りを村上龍風にデフォルメしたかんじかな。そして、カツラギのおじいさんの知り合いが出てきて、関口は最初のテロ予告の電話をかけてきた老人が口にした「満州国」という言葉を思い出す。やっと、出てくるのか、満州国が!
次回が待ち遠しい。