ヒミズ

DVDで鑑賞。
貸しボート屋で暮らす親に捨てられた中学生男子の物語。
貸しボート屋で母親と暮らす住田祐一(染谷将太)の夢は「普通」になること。中学校の教室では浮き上がる将来の夢だが、ただ一人、茶沢景子(二階堂ふみ)だけはそんな住田に共感を寄せ、彼に接近してくる。不仲な両親に邪魔者扱いされて表情を失った住田と同様、茶沢も家族を信頼できなくなっていた。茶沢は、住田と共に、未来を生きていきたいという夢を抱き始める。
貸しボート屋の近くでテント生活をしている被災者が、二人の中学生を見守っている。
しかし、住田の母親は息子を捨てて家を出ていき、貸しボート屋には住田の父親に金を貸したヤクザが取り立てに現れ、住田の日常は脅かされていく。……
中学生が主人公、となれば、とにかく生きろ、未来があるんだから、ということで希望はある。二人が落ち込みそうになる暗さは、中学時代であればだれでも落ちそうな闇をデフォルメしたもので、劇中の二人はそれが悪い親という形ではっきり対象化されてしまっているので、ある意味めぐまれているようにすら見える。
貸しボート屋の近くでテント生活をしているのは3.11の津波の被災者という設定になっており、被災地でロケしたのだろう、津波に押し流された後の街が劇中に挿入される。大きな躓きから立ち直ろうとする15歳の少年と少女が走り出す姿には、生きようとすることの明るさを感じることができた。
しかし、これは私がわるいのだけれども、女の子はあそこまでしっかりと生きることをあの年でつかまえていないと、生きる資格がないんだろうなとも感じさせられ、サブリミナル的に「おまえみたいなのはさっさと死ねよ」というメッセージも受け取ってしまったよ。いや、いいんだけれどね、馴れてるし。観てる自分とは全然関係ない所で画面に映っている女優さんはきれいだしね。男の子はあんな態度とっててもあんな生命力あふれる女の子が寄ってきてはげましてくれるんだから、ぐれる理由もじつはないんじゃないかとかね。いや、若い男優さんは、きれいだと思いましたよ。お姿見せていただけるだけで感謝しないと怒られますよね。
そんなもんだから、不謹慎を承知で言うと、最後の方で被災地のがれきの山が映ったの見たら、なんかなぐさめられたような気がしましたよ。ありがとうね、監督さん。
河原の草が風に揺れ、木の葉もそよぎ、安普請のボート屋がペンキで塗られ電球で飾られアメリカ田舎風のファンシーを添える。夜の街中では明かりの色が赤も緑もゼリーのようで、詩的な台詞とヤンキー口調がシームレスにつながり響く。エロや暴力がどぎつく見えて、なぜか観終わったらあっさりした後味。
園子温映画は一見濃厚でじつはあっさり、後口さわやか。いまのところそんな印象を持っています。なんでそうなるのか、ちょっとふしぎね。