『世界』に犯罪実話マニア向けの記事

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岩波『世界』で、2012年11月号から2013年2月号にかけて、短期集中連載『「発達障害」と刑事司法』(佐藤幹夫)があった。昨年7月30日に大阪地方裁判所発達障害とされる男性に求刑を上回る量刑を科す判決が下されたことに対し、事件と裁判についていろいろな角度から調べたもの。取り調べや裁判で障害者が直面する無理解からくる不利益、裁判員制度の影響、刑務所が障害者にとって最後の砦となってしまっている現状などが見えてくる。この連載に関連してか、「読者談話室」や「世界の潮」でも障害者権利条約についての記事が取り上げられている。
『世界』では、司法の健全化を目指してという主旨で載せている記事だろうから、犯罪実話マニア向けというと怒られそうだが、犯罪実話を読むのが好きな人こそ知っておきたいことがレポートされている。以前にも、知的障害のある青年が殺人犯として逮捕され取り調べを受けた際の状況と、彼のような障害のある人と話をするときに気をつけなければならない点の医師からの説明など、『世界』には犯罪実話マニア必読のしぶい記事がよく取り上げられている。事件マニアこそ要チェックなのが岩波『世界』なのだった。
また、ルポ『ある労働弁護士の「転向」』(佐々木実)は、これを基に映画が作れそうな実話なのだった。

追記

今号の特集には昨年12月の選挙が取り上げられていたが、編集後記を読むと、道で出会った二人の女性の会話形式になっていて、なんだか自分がとにかく買い物したいから復活した老舗スーパーに急ぐ方で、そんな相手に空模様の心配をしながら話しかけているのが『世界』の編集長さんのような気がしてきた。「商店街にある昔からの専門店のほうはいよいよ厳しいらしいから」というくだりでは、苦笑しながら読むというのを超えてちょっとしんみりしてしまいましたね。なんというか、自分はやっぱり自民党に期待をかけるしかないんだなあというのが最近の実感で、自民党政権にうまくやってもらいたい、くらいしか、政治に対しては言いようがない、リベラルを張りつづけるだけの力がないなと思うことしきりなのです。強くなければリベラルではいられないのですね。そう思います。