2001年に44歳で急逝してから、本も絶版になっていき、ノンフィクション作家として一部では熱心なファンを持ちながらも世間的には忘れられかけていた井田真木子。
しかし、そうはさせじと、里山社が『井田真木子 著作撰集』を出版しました。
http://satoyamasha.com/
この出版については里山社の清田麻衣子氏が文藝春秋9月号に寄稿しています。
清田麻衣子(里山社)『井田真木子と「私の本」』文藝春秋2014年9月号 p88
編集の仕事を続けながら自分の出したい本は何かと考え続け、東日本大震災を契機に決意を固めてひとりで出版社を起こした清田が、自分にとって「私の本」となった井田真木子の仕事を後世に伝えようと著作撰集を出すまでの経緯が語られていた。
そして、その著作撰集出版に共鳴して、四方田犬彦が週刊金曜日1006号で井田真木子について書いている。
http://www.kinyobi.co.jp/
四方田犬彦「井田真木子はいつも捨て身で書いていた。そして忘れられた。」(「犬が王様を見て、何が悪い? vol.17」週刊金曜日1006号 p56)
四方田は過去に二度会ったことのある井田真木子に関する記憶と、彼女の書いた本についての自分の思いを語っていた。文壇から距離を置き、だから文壇内のことも冷静に観察して書くことが出来たが、反面孤立した存在としてのしんどさがつきまとったようだ。
井田真木子の本は、私は新聞や雑誌の書評で知り読むことになったので、生前まったく評価されていなかったとの印象はない。『旬の自画像』(後に新潮文庫『フォーカスな人たち』となった)は単行本が出た際に中野翠がサンデー毎日の連載コラムで、最近読んでおもしろかった本として取り上げていたし、『十四歳』(講談社)も新聞か雑誌かとにかく書評欄で注目作として大きく紹介されていたのを記憶している。
しかし、たとえば当時いろいろなところで話題になった援助交際をする少女を踏み込んで取材した『十四歳』も、その後さらに援助交際について様々な媒体で語られていたものの、参考例として挙げられることはほとんどなかったようだ。だから、充実した仕事なのにそれに見合った評価がされてないというのは読者としてもあるし、井田自身にもあったのかもしれない。
井田真木子という稀有な書き手に対しては、私も一読者として自分なりの思いがある。それは本に対する感想はもちろんだが、彼女の本の読まれ方評価のされ方をめぐって女性が物書きになるということの現実を見せつけられる、それについてもちょっとちくちくした感慨を持たされる。
ただ、そういうのは、井田真木子の本を読んだ人それぞれが、自分の感想として持ったものの中のひとつだし、他の人がどう思うのかも知りたいから、とにかくまず井田の作品を読んでもらいたいなあ、今回里山社から『井田真木子 著作撰集』が出たのを機会に、井田真木子というノンフィクション作家がもっともっと取り上げられて、こういう作家がいたんだよ、いい本を書いていたんだよ、それを知ってもらいたい。一読者として私もそれを期待します。
ルポルタージュなので、井田当人には関心なくても、取り上げられた対象に興味を引かれたら、ぜひ読んでみてください。おもしろいですから。
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