草間俊郎『ヨコハマ洋食文化事始め』雄山閣

ヨコハマ洋食文化事始め

ヨコハマ洋食文化事始め

目次:
はじめに

  1. 黒船来航に伴う接待・パーティ
  2. 欧米人の飲酒とトラブル
  3. 洋酒の普及と批判
  4. 洋酒の販売
  5. 牛肉の普及と文明開化
  6. 牛乳、乳製品の普及と乳業
  7. パン・ケーキ、その他嗜好食品、西洋野菜の普及
  8. ホテル、レストランの洋酒、料理

〈付章〉西洋食文化の啓蒙に当たった人物と出版物
横浜洋食文化年表
主要使用文献
あとがき

題名通りの本です。黒船来航より西洋文化のおもしろさを知り貪欲に取り入れようとした日本人の姿が洋食を通して伝わってきます。好奇心旺盛で子供っぽいとも見える日本人の振る舞いは、西洋人や中国人に冷ややかな目でとらえられることもあったようですが、それは日本人の短所でもあり長所でもあるのではないでしょうかね。
本書には百点を超える図版が掲載されており、当時の絵や広告、ビールのラベルなどが見られます。図をぼーっと見ているだけでも楽しいですよ。
私が若かった80年代頃から、江戸時代を見直そうという動きが一部であり、時折その種の江戸紹介本とでもいいますか、それがぷちブームになることが繰り返されています。江戸を持ち出して近代から作り上げられた現在の価値観を相対化しようという趣旨がしばしば見られます。女性研究者の本も多く、女性の在り方を見直す契機としようというものもありましたが、何故か私の心の琴線に触れることはありませんでした。そういうのが話題になっている光景が目の前を通り過ぎていくだけ。
この本を読んで、私がそうなるのは、牛肉や洋食が好きだからだと分かりました。牛肉や洋食やアイスクリームのなかった江戸時代は、歌舞伎の舞台背景以上の意味は私には見出せません。
洋食に特に興味のない方も、この本には文明開化の頃の日本の様子が描かれておりますので、歴史関連の読み物が好きな方にはお薦めです。