栗林輝夫・大宮有博・長石美和『シネマで読むアメリカの歴史と宗教』(キリスト新聞社)

シネマで読むアメリカの歴史と宗教

シネマで読むアメリカの歴史と宗教

目次:

  1. アメリカ大陸の「発見」から合衆国の成立まで
    1. アメリカ大陸の「発見」と先住民
    2. ピューリタンニューイングランド植民地
    3. 宗教的に寛容な中部植民地
    4. 大覚醒運動
    5. アメリカ独立戦争
  2. 南北戦争までの時代
    1. 南北戦争をめぐるアメリカの諸相
  3. 再建の時代から第一次世界大戦まで
    1. 伝道するキリスト教
    2. ローマ・カトリック教会と19世紀の移民
  4. 二つの世界大戦の時代
    1. 第一次世界大戦
    2. 禁酒法とギャングの時代
    3. 大恐慌の時代
    4. 第二次世界大戦
  5. 21世紀まで
    1. 第二次世界大戦以降のアメリ
    2. アフリカンアメリカンの長い闘い 60年代からオバマ大統領誕生まで

アメリカ宗教史の通史を語りながら、その中の様々な出来事を描いた映画を取り上げて紹介しています。日本の歴史の教科書ではアメリカの歴史の中での宗教の役割があまり説明されることがありませんが、この本では特に宗教が及ぼした社会運動への影響がわかりやすく解説されています。また、映画ガイドとしても役に立つ一品となっております。ホーソーン『緋文字』とそれを映画化した「スカーレット・レター」(1995)を例に、小説や映画の観方を指南しているのも読みどころです。
この本ではオバマ大統領誕生までが語られていますので、今ちょうど読み時ではないでしょうか。

付記

トランプ大統領誕生で、ワイマール共和国がどうとかよくいわれるようになっていますが、『世界の歴史 26 世界大戦と現代文化の開幕』中央公論社*1も今読み時かも。第一次世界大戦から第二次世界大戦が始まるまでの欧米が描かれています。見方によっては、当時の東欧の様子から現在の中東を連想したり、またソ連中央政府が地方へ支配を拡大していく際に各地の民族と争いになったりするのが現在のアメリカの進歩派スタンダードと保守派土着的感性との摩擦にだぶって見えてきたり。人の世のありよう、人間のすることの変わらなさや時代の流れとその地域の文化背景が絡み合いながら人々の動きに影響する様を知ることができて、現在流れてくるいろいろなニュースも落ち着いて見ることができるようになるのがこういう本を読む効能かな、と。
また、『世界』no.863 に掲載されたピーター・ハーリングイスラム国 幸運に恵まれた怪物」*2は、その地域で多数派となるスンニ派の人々が少数派的な疎外感を持ち出していることが指摘されており、これは現在の合衆国の白人と似た面があるのかもしれないと思ったり。
ワイマール共和国とナチス関連では以下の二冊もお勧めです。
村山雅人『反ユダヤ主義 世紀末ウィーンの政治と文化』講談社メチエ 54*3
ヒトラー独裁下のジャーナリストたち』ノルベルト・フライ/ヨハネス・シュミッツ(著) 五十嵐智友(訳) 朝日選書560 *4