トランプ大統領

就任して2週間ですか。大統領の地位につくと見た目がめきめき大統領然としてくるのはさすがに男の人だなと感じます。ファイトスタイルのせいもあって反発も激しい模様ですが、いまのところ公約をどんどん実施していっているわけで、投票した人たちはよろこんでいるのではないでしょうか。選挙戦を勝ち抜いて大統領になったのですから、とにかく無事任期を終えて欲しい、それだけを願っています。


大統領就任式の演説を聞いて涙ぐみそうになっていた、おまえは関係ないやろな日本人の私。従来と比べると、アメリカ大統領の就任演説にしては質実にまとまりすぎていたかもしれません。でも、今、アメリカ大統領になったトランプがああいうスピーチをしている、ということも含めて、あのアメリカがなあ、という思いが込み上げてきました。聞いていて、“気分はもう、国体護持!”な感じ。すごい時代になっちゃったなって。そして、どんな国でも、そういう風になる時期ってあるよね、それ仕方ないんだよね、とも。
アメリカについて説明されるとき、人口動態を見ると今世紀中には白人が少数派になるだろうと語られることがしばしばありますが、統計から予測される単なる事実にしても、そういうことを言われると白人が危機感を覚えて防衛的になるのは仕方ないのではないかと思います。
アメリカ合衆国を建国したのは白人キリスト教徒。彼らにとってはファーザーランドなのですよ。自分たちが苦労して作り上げた国に後から入ってきてシステムに乗っかっただけの移民と父祖の代からアメリカと共にあるおれたちはちがうんだ、という自負はあって当然なのではないでしょうか。
まあ私もトランプがロシア好きなのはロシアが白人の国だからだろうなと思っちゃう程度には人種差別的気配はふつうに漂っているわけですが(笑)、そんなこといったら日本は大勢=日本人な図式がまだ保たれている状態ですから、既に多様な人種の国民を抱え込んでいる米国に対してどうこういうこともできません。
アメリカが国体護持モードになっているのは、9.11と中国の台頭のせいなのかな。
中国とは、現在経済面で同じ戦場で競い合っているわけですが、米国から見ると中国が民主主義体制国家ではないことが有利に作用することがけっこうあるのかなって。それで、このままでええんかい、というのがでてきているのでは。
9.11は、アメリカのオーラを失わさせた大事件でしたが、その後、アフガニスタンイラクを攻撃したものの痛手の挽回には至らず、とくにイラク攻撃はその後の中東の混乱を引き起こして、ISという敵国を生み出してしまった。そして国際情勢の中でイスラムの存在感が増幅している。
神道国家や共産主義ソ連との戦いも、米国のキリスト教徒にとっては宗教戦争だったようだし、それで特にISは名指しで敵扱いになるのですかね。
9.11が起きたとき、日本の雑誌で事件の背景解説に、既に事件が起きる前、イスラム圏の高名な政治家か知識人かが亡くなる前に「ソ連が崩壊し、次はイスラムが彼らの敵になったのだ」と語ったと紹介されていました。ヨーロッパと中東は地理的にも近く歴史的にも濃く絡んでおり、キリスト教徒とイスラム教徒の間には日本人には想像できないような相克がありそう。
ただ、じつはイスラム国というのは、ロレッタ・ナポリオーニ『イスラム国 テロリストが国家をつくる時』文藝春秋*1を読むと、スンニ世界でのアメリカ合衆国のようなもの建国なのではないかというのがあって。しかも、20世紀後半のアメリカのサブカルチャーの影響も感じられて、ポストモダンな色彩すら帯びているようでね。
イスラム国は空軍持っていないし、恐れるとすれば、仲間意識の感染力なんでしょうけれども、それもたぶん20世紀のアメリカが持っていた力に重なる。
時代が移り、イスラム圏にオレのターンな気分が出て、そしてアメリカは21世紀の自己像を模索している。
……そんなことを考えてしまった日曜の夜。