『世界』でサウジの電ノコジョークを

 

世界 2019年 04 月号 [雑誌]

世界 2019年 04 月号 [雑誌]

 

 4月号から始まった新連載、師岡カリーマ・エルサムニー「すぐそこにある世界」の第1回は「ノコギリに笑う人々」、電ノコジョークから発せられるアラブの人々の思いが伝えられています。どんなジョークかは、『世界』で読んでみてね。日本人にとってはスパイシーすぎるというかヘヴィデューティーな印象もありますが、アラブとくらべるとぬるい日本だって5ちゃんねるあたりではけっこうなことが書き込まれるし、サウジアラビアは王制のせいか、昔の帝を揶揄する落書落首のようでもあり、たとえばシリアでアサド大統領に対して同じようなジョークが言えるのかなあ? などと思ったり(いってるのかもしれないけど、ネット上には転がってそう)。

トルコやイランにくらべると、サウジアラビアは荒っぽくて強面な一方でどっか抜けてるイメージがあり、そのせいかなんかにくめないんですよ、平和ボケ日本でぼーっとテレビで見てる分には。あの様式美に異国人は魅せられたりもするし。せっかくオイルマネー持ってるんだからぜひ有効活用してアラブの若い世代をしあわせにしてあげて欲しいし、それよりまずイエメンをなんとかしてもらいたいですけれども。

この連載では、アラブ諸国のことがいろいろ取り上げられそうなので期待しています。

1月号からはじまったカラー口絵の連載、金井真紀「ことわざの惑星」も、いろいろな国のことわざがきれいなイラストとその国の言語とともに紹介されていて、楽しい。

 

英語学習で煮詰まっている人は、音声と字から学びはじめなければならない外国語を、ごく初期段階でもいいですから、あいさつとかんたんなことばだけでもちゃんと発語して書き取れるように練習してみると、解毒されて、英語の勉強もしやすくなりますよ。遠回りのように見えますが、ぜひお試しを。

東外大言語モジュール http://www.coelang.tufs.ac.jp/modules/

高度外国語教育独習コンテンツ http://el.minoh.osaka-u.ac.jp/flc/

追記

上で、サウジアラビアの、主にこのところテレビのニュースで見ることの多いMBSのぱっと見に引っ張られた、たとえていえば「日本人は皆小柄でマスクをしている」に近いすごーく雑駁な印象を書いてしまいましたが、そのことを反省しています。

というのは、榮谷温子先生のNHKラジオアラビア語講座に出演していたイサム・ブカーリ氏はサウジアラビア出身の方でしたが、ラジオ講座の最終回で詩を送ってくれました。アラビア語学習者をやさしくはげましてくれる、美しい詩でした。

アラビア語圏では、詩が一般の人にたいへん親しまれているようで、最近ですがNHKのテレビでアラブでの詩の大会で決勝戦まで残った女性を追ったドキュメンタリーが放送されていました。決勝戦に出場した女性は彼女一人で、後はすべて男性の詩人。彼女の詩は審査員には最も高く評価されていましたが、一般の視聴者からの投票は他の男性詩人が多く、優勝はできませんでした。その大会では、客席にも女性が多くいたし、舞台上での審査でも彼女が女性だからといって特に差別されているようには見えませんでした。しかし、その女性が世の中の現状を批判的にとらえた詩を詠むと、欧米のマスメディアがそれを大げさに伝え、その女性詩人は取材に来たマスコミ相手に誇張され過ぎて歪んだ像を修正する負荷がかかりました。しかし、マスコミに注目される中、彼女が自分のことを説明するのを聞いた多くのアラブ人女性は、自分たちのことをちゃんと伝えてくれたとよろこんだそうです。

BBCとかで、日本のことが取り上げられると、なんかへん、というか、イギリスの側に日本に対する偏見(男女差別がはげしいとか昔の因習がたたっているとか)があって、それにあうように切り取られて噺をまとめられてしまう違和感を覚えることが常態です。そして、これはたぶん日本だけでなく、アラブも似たようなかんじでやられているんだろうなと想像されて、そういう点では、日本とアラブは共通する面があるのではないでしょうか。

女性差別については、欧米からの波動が伝わらないとなかなか改善の動きが起こせないもどかしさが日本にはあります。アラブもそうなのかもしれませんが、だからといって欧米の見方が正しいのかといわれると「???」な点も多くて、文化や社会背景が異なる欧米流をそのままなぞるわけにもいかず、そこでいったんよさそうにみえるものを自分たちのものにするための時間や手間がかかるわけですよね……

師岡カリーマ・エルサムニーの新連載は、そういうことを考える際のヒントをくれそうな気がしました。