『世界』2019.8 「アッラーとやおよろず」

 

世界 2019年 08 月号 [雑誌]

世界 2019年 08 月号 [雑誌]

 

 

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『世界』2019.8 師岡カリーマ・エルサムニー「すぐそこにある世界 第5回 アッラーとやおよろず」は、梨木香歩『椿宿の辺りに』を読み、日本の神話や古来からの言い伝えに材を取った一神教の世界観とは全く異質な筈の発想から紡がれた物語から何故かエジプトの懐かしい記憶を呼び覚まされた著者が、日本で言うところの八百万の神々を「精霊(ジン)」と置き換えると、中東の人にも日本人のいう「神(カミ)」がイメージしやすくなるのではないかと思い当たって、さて、という話でした。くわしくは『世界』を読んでみてください。
こういう話を聞くと私はうれしくなります。なぜならアラビア語を勉強しているからです。神道では祭事では祝詞を誦みあげますが、これは仏教のお経とはちがって日本の古文ですから、現代文にくらべれば古風な言い回しですが、聞いていて日本語としてそのまま耳に入ってくるのです。YouTubeイスラムの礼拝を見ると、クルアーンアラビア語ですから、たぶんアラビア語話者にとっては神道祝詞を聞いているのに近いのではという印象があるのですね。うつくしいけれども遠い世界に見えるものに、少しでも近しいものを感じると、うれしくなり、もっとわかりたいから勉強を続けよう! という風になります。
モスクの中に仏像みたいなのがないのも、神社に通じるものがあり、仏教よりはなじみやすい雰囲気を感じてしまうのです。
ただ、私は家が神道だから神道のものになじんでいるというだけで、きちんと神道の勉強をしたわけではありませんし、ほかの宗教についても同様ですので、たんに個人的感想しか出てきません。仏教よりはキリスト教イスラムに関心がわくのは、神、という概念に引かれるからでしょう。不可知をも含みこんだ世界を神が表すなら、既知と未知を常に意識する科学研究は神が寄りそう学問と言えますし、科学者が全能の慢心に陥りそうになるのを引き留められるのも神しかいないでしょう。
神、といえば、『ほんとにあった怖い話』で今も人気連載中の山本まゆりの霊能者・寺尾玲子の活躍を描くマンガがあるのですが、単行本『霊界への道標』では、寺尾玲子が霊能者になるまでの成長過程が描かれていて、子供のころから心霊体験をし、心霊に関する勉強をするようになり、様々な体験を経て、「神様というのは、祀ればご利益をくれるとか、そういうせこいものではない。形があるようなものではなく、本当の神様はもっと広くて大きい自然とか宇宙みたいな存在なんじゃないか」と気づく場面があります。これも、一神教の神の概念と重なるものがありますよね。
だんだん話が脱線してきましたが、私はリアルではオカルトな人と接するのは苦手なのですが、『ほんとにあった怖い話』みたいなマンガを読むのは大好き、とくに山本まゆりの寺尾玲子シリーズは、基本、悩んでいる人が救われる話ですし、寺尾玲子は霊に惑わされずにしっかり日常生活を送ってくださいというメッセージを送る人なので、安心して楽しめます。
それと、これは余計ですが、女子が心霊話を好きなのを嗤う男性は多いですが、男性が思っているように本当に信じているのかというと、それは微妙にずれている、男性には伝わりにくい感覚があるのかもしれない。男性はね、普段、女性を「心霊」のように扱っている、女性が話していることを霊が話しかけてくるもののように聞いている。女性もそのような在り方で男性にとりついて社会が成り立っている。だから、男性には女性という逃げ場というか糊代みたいに使えるものが日常あたりまえにあるんだけど、女性にはそれがないから、それで、女性には「心霊」が必要になってきてしまいがちになるんじゃないでしょうか。
暑い夏の夜、そんなことを考えてしまいますね。

 

 

 

HONKOWA (ほん怖) 2019年 09 月号 [雑誌]

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# いま見返すと後部に謎の空白が! 編集で直そうにもどうにもならない orz