平山和子『くだもの』福音館書店

 

くだもの (幼児絵本シリーズ)

くだもの (幼児絵本シリーズ)

 

 とくに目的もなくふらっと本屋に入ってうろうろしていたら、平積みになっていたこの絵本に目がとまり、衝動買いしてしまいました。ひとめぼれとでもいうのでしょうか。白い背景に写実的に描かれた果物の絵。これがね、もう、ぐっとくるんですよ。絵がすばらしい、なんというかね、この絵が、描いている人がどれだけ対象にまっすぐ真摯に向き合っていたかをびんびんと伝えてくるんです。もちろん、描かれたくだものの持つ魅力とともに。くだものが絵を描かせてるわけだものね。

幼児向け絵本ということで、ほんものそのものみたいな果物の絵の下にひらがなでその果物の名前が書いてあって、次のページでは、その果物の皮がむかれて食べられる状態になった絵が「さあ、どうぞ」という台詞とともに差し出されています。子供がたのしくひらがなを読めるようになる絵本ということでしょうか。

絵本は好きで、図書館に行ってもよく見ます。子供がいないので、絵本を開くとすみやかに自ら幼児退行してその中の世界に入っていってます。また、大人の目で見るとちがった楽しみ方ができるのも、絵本のいいところですね。

この『くだもの』は、ちょっとやさぐれた気分になったときに見ると、初心忘れるべからず、となって、背筋を伸ばしてしゃんとしたくなったり、ぐんにゃりしすぎたときには絵から力をもらって元気が出てきそうな、良い覚醒をうながすオーラを発散しているんですよ。絵がちゃんと描けるってほんとにすっごいことなんだって実感させられる。ぜひ、機会があれば見てみてね!

平山和子のファンになりました。