『世界』8月号「メディア批評」でNHK「これでわかった! 世界のいま」のBLM解説アニメが取り上げられているのだが

読んだ印象では、評者は”問題のアニメ”だけをネットで見ただけのようなので、番組を視聴した者としての感想を書いておく。

 当日の番組ではBLMを取り上げ、まず発端となったジョージ・フロイドさんが警官に取り押さえられた際に喉を膝で強く押さえつけられたせいで死亡した事件を取り上げた。その過度な暴力性を疑問視し、じつはアメリカでは、警官に殺される黒人の例が、白人に比べると多いんです、というアメリカの事情の説明があった。他の場面でも、白人にくらべると黒人は不利な扱いを受けることが多いんです、とも。このあたりは進行役とちりこさんの対話でわかりやすくなされた。そして、なぜそうなるのか、そのアメリカの社会構造の絵解きとして、あのアニメが用いられたのだ。『世界』8月号でも藤永康政「ブラック・ライヴズ・マター蜂起の可能性」という、BLM が起こったアメリカの社会構造を解説した記事が出ているけれども、それと同じような説明をざっくりとわかりやすく示したのが、あのアニメだった。「これでわかった! 世界のいま」の前身が、「子どもニュース」だったことを思い出してほしい。学習マンガで歴史を描くときに子どもに大枠をつかまえさせるためにする表現、あの流れでアニメは作られている。アニメの質感もあわせて、あれはよくできていた。大人、特にインテリな方たちからすればざっくりし過ぎているだろうけれども、「BLM って何?」な人に対しては、死亡事件がきっかけで抗議デモが起きた背景をつかませるには十分有効だし、何よりアメリカにそういう社会問題がある、と伝えられただけでも有意義だった、そう私は思っている。

 ネットで炎上したからとはいえ、天下のNHKならいくらでも自分たちの考えをネットだけでなくテレビでも発信できるわけだし、そのNHKが非を認めて謝罪し、検証番組まで放送した後で、こういうことを言うのも野暮かもしれないが、あのアニメがネットで炎上した過程は、番組のことを何も知らない人がネットで見て自分がぽこんと思ったことをツイートして、それがお気持ち連につながっていったという流れで、一般人ネットユーザーはそれでべつに構いはしないけれど、『世界』の「メディア批評」がそんな流れにそのまま乗ってどうする、と思う。

 

 

BLMに関しては、大企業が次々とBLMのために資金を提供します! と早々に表明してきたのを見て、ああこれ、彼らは自分らが今現在実質奴隷所有者になってる自覚があるから、なんか保険かけてきてるんだろうな、という感想を持ったし、欧州にも波及してベルギーがかつての植民地だった国に謝罪したりしてるのを見ると、これでもう縁切りするってことだな関係終わりだな、新型コロナで移民も制限できるし、みたいなかんじがしてしまう。うがった見方ばかりするのはよくないのは分かっている。ただ、#MeTooもそうだったが、BLMもバブル化して、実はもっと大事な問題があるんだけど、矛先をそこから外させるためのイベント化しているように見えてきているので、『世界』みたいな雑誌はそういうバブルに巻き込まれないで欲しい。

 

『世界』8月号だが、特集2『パンデミック後の中国社会』、連載では師岡カリーマ・エルサムニー「すぐそこにある世界」アラビア語のキラキラネームの話がおもしろい。他も全体に充実しています。読者が増えるといいよね。

 

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