『世界』2021年7月号 北條勝貴「亡所考」 失われた養狐場を求めて

 

コロナ関連では、河合香織分水嶺2 コロナ緊急事態と専門家」の連載が始まりました。分科会、そして政府の、 5月13日からの動きを追っています。

 山岡淳一郎「コロナ戦記 第10回 大阪医療砂漠」、アルンダティ・ロイ「インドのパンデミック」も必読。インドでは医療の民営化が進められたことがコロナ禍の負の要因になってしまっているとのこと。

 さて、連載中の北條勝貴「亡所考」は、先月号から日本で大正時代から昭和初期にかけて隆盛したものの戦争を境に消失してしまった養狐業の跡を追っています。前回(『世界』2021年6月号)では、2017年に北海道網走で黒いキツネが目撃され、「突然変異か」と話題になりましたが、それはかつて養殖されていた銀黒狐の子孫である可能性があるとのこと。そのことに大勢はまったく思い当たらぬほど日本の養狐業は忘却されきっているのです。

 今月号では、「そこにいたケモノたち 毛皮獣養殖の地域史」と題して、八ヶ岳山麓の養狐場などの跡をたどっています。養狐に適する条件として、冷涼・乾燥・静謐というのがあって、これは養蚕の条件、また結核療養の条件とも重なるため、養蚕業から養狐業に転じた例や、サナトリウムの近くに養狐場があって、気晴らしに療養者がキツネを見に来ていたりしていたそうです。そのためか、文人がキツネのことを書き残したりしている。くわしくは『世界』7月号を読んでみてください。

 来月号では屠殺され毛皮を剥がれた後のキツネたちの遺体はどう処理されたかをレポートするそうです。