『世界』2022年6月号

 

 

 

阿部海太「民話採光 6 がらんどうの歌声」
 闇と直につながるような深い藍色、その奥から血肉を連想させる赤が歌の源を浮かび上がらせる。もとになっているのは屋久島の民話「歌うさらし骨」、しゃれこうべになった者の無念を悼むようでありつつ、じつは彼女をそこまで追い込んだ者たちがゆるされようとするためのおはなしにも受け取れる。両者すべてを包み込んでそのまま昇華しようとするような暗さと熱をたたえた絵。

森さやか「いま、この惑星で起きていること 30 考える葦と温暖化」
 気圧の単位「ヘクト・パスカル」の由来になったブレーズ・パスカル、彼の遺した格言「人間は考える葦である」から話を起こし、南極での前代未聞の観測結果、国連の気候変動に関する政府間パネルIPCC)からの警鐘、ウクライナ侵攻を口実に進む森林破壊、また、国ごとに温暖化に懐疑的な人の割合が違ってくるのは何故かなど、地球温暖化に関する話題が取り上げられています。締めもパスカルの言葉で。
 
 お待ちかねの「読者投稿 コロナ禍を生きる(下)」も掲載されていますよ。
 
 「メディア批評」では、ウクライナ情勢の報道のされ方が中心、終わりで建造物侵入容疑で逮捕された北海道新聞の記者が不起訴処分になった件に触れ、日本における取材の自由について論じています。
 私見では、逮捕の報道が流れた直後にツイッターで記者への非難ツイートがどっとあふれて、それがその時点での北海道新聞の対応に影響したのかしらん? と思ってしまった記憶があります。捜査関係者OBの見方は冷静なものでしたが、注目されませんでしたよね。
 あのころにくらべると、いまはもうマスメディアもツイッターなんかに馴れて、ネット上で見ることができる反響がどういうものか分かってきてるんじゃないかな。
 
 
 特集はどれも、ウクライナ侵攻の影響を伝えるものになってそう。
 
 『世界』6月号を読んでみてね。