『トランプ・ショックに揺れる世界』 2017年『世界』臨時増刊 no.894

 

『世界』2022年7月号には、半沢隆実「暴力と分断 - 米国の危険な兆候」寺島実郎ロシア正教という要素 - ウクライナ危機とロシアの本質(2)」が載っていて、どちらも国を動かそうとする宗教的情熱に光を当てています。

 アメリカのトランプ支持者にはキリスト教愛国主義者が目立つとか。
 
 それで、2017年に出た『世界』臨時増刊 no.894 『トランプ・ショックに揺れる世界』を読み直しています。
 まだトランプ大統領が就任した直後で、「どうなるんだろう? トランプは任期途中で投げ出しちゃうんじゃないの?」などと言われていた時期に出たもの、そのためトランプ政権爆誕の衝撃が生々しく伝わってくる臨時増刊になっています。
 
 (トランプ大統領爆誕がなければ、コメディアン出身のゼレンスキーが大統領になることもなかったんじゃないか、くらいには思いますよね。それくらい衝撃的だったんだよ)
 
 赤木昭夫「トランプ症候群 - アメリカの病根」で、トランプの参謀であるスティーヴン・バノンがどのような人物なのかを語っています。バノンは愛読書としてイタリアのユリウス・エヴォラが書いたファシストの経典と、1997年に刊行されたウィリアム・シュトラウス、ニール・ホウ共著『ザ・フォース・ターニング』を挙げているとのこと。
 
 「ザ・フォース・ターニング」つまり「四番目の曲がり角」とは、80年おきにアメリカは大きな戦争を経験してきてるんだけれど、その四番目の戦争にさしかかるまでの20年間のことで、この前の大戦争は1945年に終わったので、次はそれから80年後の2025年あたりに起きる、すると2005年からの20年間は「四番目の曲がり角」なんだよね、ということ。
 
 本の紹介をネットで見ると、この『ザ・フォース・ターニング』はオモシロ本寄りの一品なのかなあというのがあって、バノンもファシストの経典は座右の書なのかもしれないんだけど、『ザ・フォース・ターニング』は「こういうおはなしおもしろいでしょ?」的に利用してるみたいね。講演や動画でバノンはしばしば米中戦争について語っているそうですが、その際に使っているようです。
 
 ウクライナ侵攻以降、アメリカからもロシアについては困ったもんじゃのぅモードの発言が続いていますが、それはそれとして、現在のアメリカにとっての仮想敵国は中国なんですね。
 米中戦争について考えているのはバノンだけではない。
 
 赤木昭夫「トランプ症候群 - アメリカの病根」では、トランプショックが醒めない時期だったせいか、アメリカは強大な軍事力しかとりえがないみたいな言い方をしてたりするんですが、産油国にして農業大国のアメリカはいざとなったらひきこもって自給自足できそうだし、その点はロシアも似たようなもんなんじゃないか。
 それに比べて、日本はひどくはかない存在に見えてきてしまうのだが……
 
 ほかにも、いま読み直すといろいろなことがはっきり見えてくる記事満載です。2017年『世界』臨時増刊 no.894 『トランプ・ショックに揺れる世界』、読んでみてね!
 
 もちろん『世界』2022年7月号も、おもしろいのでお勧めです!