『世界』2022年10月号 特集2 オンラインと自由 誹謗中傷から考える

 

 

山本龍彦×小嶋麻友美「兵器化する「表現の自由」とアテンション・エコノミー

 オンラインの誹謗中傷によってプロレスラー木村花が自殺に追い込まれるというショッキングな事件をきっかけに、オンラインハラスメントが社会問題として広く認識され、法改正も行われたが、情報生態系の変化への対処は「ここからが始まり」。

 私たちは日々、SNSを無料で使っています。しかし、実際にはアテンション(関心)を支払っている。情報やコンテンツが氾濫する情報過剰時代には、市場に供給される情報量に比して、私たちが支払えるアテンションや消費時間が圧倒的に希少になるため、それらが交換財としての価値を持って経済的に取引されるわけです。これがアテンション・エコノミーですね。

(引用元:『世界』2022年10月号 p204 山本龍彦×小嶋麻友美「兵器化する「表現の自由」とアテンション・エコノミー」 )

 TikTokは縦スクロール画面を指でスワイプすることがユーザーのドーパミン放出を誘発することまで計算した仕様になっているとか、国産プラットフォームのヤフーは取材に対してオープンで回答も得られるけれども、海外プラットフォームのグーグルやメタになると日本法人に問い合わせても回答拒否で、発表すべきことは自社プラットフォームで発表しますからで終わってしまう、など。

 主要プラットフォームはすべて米国に本社があるので、中国やロシアなどしばしばインターネットを規制して言論の自由弾圧と言われますし、まあそうなるんでしょうが、米国の足下にある通信を使用することへの警戒感はあってもおかしくないかなって。

 また、スマホが公私両面で不可欠になった人が増えた今、オンラインの誹謗中傷が常に肌身から離れないような「身体性」を帯びてくる点も指摘されています。

 

深町晋也「オンラインハラスメントをめぐる刑法上の課題 侮辱罪の法定刑引上げを受けて」

 侮辱罪法定刑引上げが、インターネットでの誹謗中傷対策への法改正の一歩となりましたが、果たしてそれは適切だったのか、処罰範囲に変更はないとはいえ、法定刑引上げによる「萎縮効果」はあるのではないか。また、オンラインハラスメントの特性に鑑みた新たな法規制を作る必要が出てくるのでは、など。

 ネット炎上をもたらすリツイートやいいね!などをどう取り扱うべきなのかも考察されています。騒乱罪の付和随行者の扱いが例に挙げられている。

 

坂本旬「リテラシーからシティズンシップへ 変容するデジタル世界と教育」

 2022年夏の参院選で、参政党やNHK党が議席を獲得したことから始まり、これら政党がソーシャルメディアを駆使して活動している点に着目、パソコン通信が始まった当初は市民ネットワークの広がりが自由と民主主義をたしかなものにするだろうと期待された地点から、いまやインターネットが健全な民主主義を脅かす存在と化してしまった。インターネットの普及と、それに伴い何を市民が備えなければならないかを考察しています。

 

くわしくは『世界』10月号で読んでみてくださいね!

 

ちょっと読んでいて思い出した本を紹介しておきます。わたくし的に右斜め下な連想になってきますが。

 

 

 

新しいメディアが大衆にどう消費されどんな影響を与えたか、ざっと見られます。

ネット上で起こっていることは、映画、テレビ、週刊誌など、大衆向けマスメディア上で起こっていたことの劣化コピーに見えることが多いのです。ちがうのは、ネットは一般人も発信でき、なんかもうみそくそいっしょくた殺伐フラット感絶大なところでしょうか。