いま英語圏では日本文学の翻訳ブームだと伝えられていますね。女性作家の作品や雨穴が出版され人気だそうです。
日本の同時代小説を翻訳して英米語圏に流通させる基盤ができたのは1950年代半ばから70年代のこと。GHQで本の検閲を通じて同時代の日本文学に触れたハロルド・シュトラウスが、帰国後、クノップフ社で日本文学翻訳プログラムを立ち上げたことに始まるとのこと。
三島由紀夫『潮騒』は、1956年に米語版が出版され、好評を博した。出版されるまでの訳出での苦心や、三島由紀夫とクノップフ社とのやりとりなど、興味深い過程がくわしく伝えられています。『世界』5月号で読んでみてね!
さて、『潮騒』より先に英訳が進んでいた『仮面の告白』は、いったんクノップフ社が出版を断ってきていた。その理由について、シュトラウスは三島に宛てた書簡で「同性愛を扱った非常に多くの小説がここ(アメリカ)で出てきているため」と述べている。
50年代頃のアメリカって、そういう小説が多かったんだな……。
1947年のエドワード・ドミトリク監督の社会派フィルム・ノワール「十字砲火」は、反ユダヤ主義が背景に潜む犯罪を捜査するおはなしで、最近話題になった映画「シビル・ウォー」の中の決め台詞も既にアメリカの社会問題として描出されている。
ただし、この映画の原作になった1945年に出版された小説では、同性愛者への差別が動機となっており、当時のハリウッドでは同性愛は描けなかったため、ユダヤ人差別の話に変えられたとのこと。
(この作品のせいではなく、出自のせいで、エドワード・ドミトリク監督はこの後赤狩りにあって苦労したそうです)
映画「十字砲火」は、アマプラで観られるよ!
反ユダヤ主義というか、ユダヤ人差別は西洋では根深く、『世界』2025年5月号でも若林恵「午前1時のメディアタイムズ 第2回 アメリカファーストの反対語」で、MAGAに分断を生じさせる問題としてイスラエルが取り上げられている。イスラエルをイスラームの浸透から西洋社会を守る防波堤と見なすか、それとも昔からつづくユダヤ陰謀説にならってディープステートの黒幕と捉えるか。ここでMAGA陣営の意見が分かれているそうです。『世界』5月号で読んでみてください。
パレスチナへの攻撃が過剰すぎるとして、イスラエルに対して反戦運動みたいなのがアメリカの大学では起きてきていて、それに対するとりしまりが物議を醸していますが、欧米のイスラエル政府への抗議はたしかに西洋の歴史に連綿と続くユダヤ人差別の地下茎につながりやすい面があって、反ユダヤ主義を欧米の政府が警戒するのは十分理由あってのことでしょう。ただ、トランプ政権の取るユダヤ系社会を守るための施策が、かえって過度なユダヤびいきに受け取られ、反ユダヤ主義を加速させるおそれがあると見るユダヤ人もいます。下の記事を参照ください。
また、アマプラで観られる映画として、「牛泥棒」もお勧め。若い頃のクリント・イーストウッドが感銘を受けた映画として知られていますが、アメリカの正義の原風景、男の強迫観念と親子関係みたいな、いまにつづく課題が描かれています。
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