赤い風船/白い馬

DVDで鑑賞。

赤い風船

  • 原題:Le Ballon Rouge
  • 監督・脚本:アルベール・ラモリス
  • 撮影:エドモン・セシャン
  • 音楽:モーリス・ル・ルー
  • 製作国:1956年フランス映画
  • 上映時間:36分
  • 出演:パスカル・ラモリス、シュザンヌ・クルーティエ

街灯に引っ掛かっていた赤い風船を少年が助ける。するとその赤い風船は、少年と仲良しになった人魂のように、ずっと少年について来る。灰色がかった古びた石造りの街並みを、光沢ある赤い風船が飄々と飛んでいく、その美しさ、おかしさ。
いつも少年が赤い風船といっしょなのを見て、意地悪な考えを起こした他の子供たちが、風船をつかまえてパチンコで撃とうとする。少年は、赤い風船を必死で守ろうとするが、多勢に無勢、ついに少年は悪童たちに捕らえられ、赤い風船はパチンコで撃たれてしまう。赤くはちきれそうだった表面が徐々に皺ばみ、輝きを失せさせながら萎んで地に落ちて動かなくなる様は、命あるものが死んでいくように見える。
最後まで赤い風船を守ろうとがんばった少年を讃えるかのように、街中の色とりどりの風船が少年のもとに飛んでくる。少年は祝福され風船と共に空に舞い上がっていく。
絵で見せる短編だが、この最後の場面では、あの風船おじさんはこの映画を観たのだろうかと思わずにはいられない。厭世的な美しさというべきなのか。

白い馬

  • 製作国:フランス 1952年
  • 原題:Crin Blanc
  • 監督・脚本:アルベール・ラモリス
  • 撮影:エドモン・セシャン
  • 音楽:モーリス・ルルー
  • 出演:アラン・エムリイ、パスカル・ラモリス

馬飼いに追われる野性の白い馬を少年が救う。
フランス南部の荒地、小さな家でおじいさんと妹と共に暮らしている少年。この荒地には野生馬の群れがおり、馬飼いたちが野生馬を捕まえにやってくる。野生馬のリーダーである白い馬は特に目立ち、馬飼いは捕獲しようとやっきになっていた。少年は夢でその白い馬と歩く自分の姿を見、白い馬が気になりはじめる。
人に綱をかけられ、ふりほどこうと暴れる馬、馬同士でけんかするとき、なびくたてがみ、骨太で毛皮におおわれた馬の肉体が見せる流麗な曲線、映画のために無理にさせられているのかもしれないと思いつつも、躍動する馬の姿にうっとりと見とれてしまい、そしてそんな自分を罪深く感じてくる。
そのせいか、馬飼いのオッサンから逃れることは正しい、そういう気分になってくる。
白い馬は、たてがみの前の方が長く多量で顔に被さっており、そのせいか見た目が前髪を長く伸ばしている人の顔を連想させ、人のような表情で少年に語りかけてくるように見える。
執拗に追ってくる馬飼いから逃れ、白い馬は少年を背に乗せて海へ入っていく。馬飼いはその馬はもうおまえにやるから戻って来いと叫び続けるが、少年は白い馬と共にオッサンのいない世界へと旅立っていく。
『赤い風船』と同様に、手塚治虫的人間嫌いを感じさせる、美しい白黒映画だった。