村上龍「オールド・テロリスト」第二十六回 文藝春秋2013年8月号

カツラギと共にミイラのような老人の葬儀に赴いた関口の前に、ミツイシと名乗る男が現れる。連続したテロの主犯ではないかと関口が疑っている男だ。どう対応すればいいのか悩む関口だが、カツラギは物怖じせずミツイシと対話し、ミツイシからの静岡で共においしいシラスを食べながらお話ししましょうという誘いに応じることになる。……
今回の関口だが、読んでいるとなぜかエヴァのシンジ君の「逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ、……」というモノローグが脳内をよぎった。しかし中年男の関口の場合、自分が逃げられないことをシンジ君よりは淡々とあきらめと共に認めることにはなるのだけれども。
マツノ君が帰郷し、関口がこの異常な状況を共有できる相手はもうカツラギしかいない。そして、カツラギもまた、関口しか今の自分の心境を話せる相手がいなくなっている。
そんな中で、今回の最後のほうでは関口の声が裏返るようなことも起きるのだが、次回はどうなるのだろう。続きが楽しみですね。