太田昌国『日本ナショナリズム解体新書 発言1996-2000』(現代企画室)

日本ナショナリズム解体新書―発言1996‐2000

日本ナショナリズム解体新書―発言1996‐2000

太田昌国氏が1996年から2000年にかけて書いた文章を集めたもの。特にそのころから顕著になりだした日本のウヨ化に関しての考察が多い。
私はこの日記での[朝日報道問題]を読めばわかるように、ウヨウイルスに感染して発熱した過去を持つ者なので、自分がいつ、どのような経路で感染したのか我が身を振り返ったりしてしまった。
太田氏は、たとえば小林よしのりが多くの若者に支持されるような状況は、左翼・進歩派知識人も加担して作り出された面があり、また戦後左翼・進歩派の代表的な人物の著作も読み直してみると根深いナショナリズムを宿していることに気がついたなど、「自由主義史観」を批判することは同時に我が身を省みる作業となるという。批判は自らをも刺すことだと。
また、一部インテリの「アカデミズムの上では一定の理論的手続きを経た作業を行い、大衆向けの言論の場では東大教授の肩書きで、論証抜きの居丈高な国策イデオローグと化す」振る舞いを例を挙げて指摘、「最悪のデマゴーグ」と非難している。
くわしくは読んでもらいたいけれど、私はこの本で、日本ウヨ化現象の表れとして「ペルー日本大使公邸事件」の報道や、この事件に関する言論人の発言が何度も取り上げられているのが印象に残った。
この本にまとめられた文章が書かれていた時期にちょうどペルー人質事件が起こっていたから、なのだろうけれど、そういやあのとき、有無をいわさぬ武力行使に出たペルーのフジモリ大統領のことを、あれこそホンモノのサムライだのなんだのとほめまくっていた人がけっこういましたね、と、そんなことをこの本読んで思い出しましたよ。
もっとも、私なんかは、今更ペルーのフジモリなんて名前を聞いても「いまはむかし、ペルーにフジモリという大統領ありけり」という気分にしかなりませんが、フジモリはともかく、ペルーをはじめとして南米というのは気になる地域だったりしてます。
南米で起きていることは、日本のこれからを考える時にすごく参考になりそうじゃないですか。

追記

↓1998年からの文章が出てる。
状況20〜21 - 現代企画室