悪霊喰

ニューヨークの司祭が急死した恩師の謎を解くためにローマへ飛び“罪食い"に出会う。
DVDで鑑賞。
ニューヨークの司祭アレックス(ヒース・レジャー)は、恩師が急死したと知らされ、彼を慕う女性マーラ(シャニン・ソサモン)と共にローマへ飛ぶ。自殺とされていた恩師だが、死体発見現場にはアラム文字が書き残されており、アレックスは恩師が殺害された後、儀式が執り行われたのだと確信、事件の謎を解こうと調べ始める。恩師は、神秘学の研究にのめり込み破門されていた。アレックスは恩師の研究していた“罪食い"に関係があると見て、“罪食い"とは何かを突き止めようとするのだが。
冒頭の殺人、その謎を解き明かそうと集まる男女、手がかりをたどって“罪食い"なる犯人を追うという流れ、ミステリーや犯罪映画での定番の場面や、SFや探検ものの要素も取り入れながら、前半は速い展開で話が進んでいく。カトリックの衣装や美術の雰囲気で包まれており、それがおはなし全体の統一感を保っている。ただし、後半はややだれ気味で、話に無理も感じた。
“罪食い"を謎をつかむために、主人公は友人の司祭の手引きで教会にとっては闇の対抗勢力になる団体の首領に会いに行くのだが、その闇の集団の本部というのが地下の変態クラブのような安っぽさ。なんというか、美輪明宏が乗り込んで「まあ、なにこれ、ださい!」とひと声叫んで九字を切ると、余裕で勝てそうな、そんな地下組織なのである。
アレックスを演じているのはヒース・レジャーだが、私は『ダークナイト』のジョーカーの顔でしか覚えていないので、地顔はこんなでしたかとあらためて見入った。角ばって顎がきゅんと三角にとんがった輪郭と、目元のかんじ(これは目の形状よりも目つきからくるものだろう)が、ちょっとジェームズ・ディーンを思い出させるような顔なんですね。白人男にはこの手がけっこういるんだろうな。個人的にはあまりぴんとこない顔なので記憶には残らないかもしれない。私にとってはヒース・レジャーといえばあのジョーカーの顔で覚えられることになりそうだ。ヒースのジョーカー、可愛かったですもんね。
“罪食い"だが、人の罪を吸いだして食う不死の者、とのことで、これとそっくりなものが登場する少女マンガがあったんだよね。この映画はカトリックと絡んでいるので宗教的な説明がなされるが、日本の少女マンガではそこまで宗教的になることもなく、悪意をため込こむような状況から人が解放されるまでのドラマがユーモアをもって描かれていた。題名も作者名も覚えていないけれど、作者は絵よりおはなしで読ませるタイプのマンガ家で、私はデビュー作を小学生くらいのとき『りぼん』で読んだことだけは覚えている。絵を見ると、「ああ、あのマンガ家だ」とわかるんだけどね。近年では『ほんとにあった怖い話』で、精神的に落ち込んで幻覚に悩まされるほどになり医者に通いながら立ち直るまでの体験談を描いていた。近年とはいえ、これも読んだのはかなり前になるのかな。
話がずれたが、映画『悪霊喰』のほうは、同性愛的な含みを想像するのも容易だし、自殺方法として両手首を切るというのが、古代ローマで貴婦人を処刑するのに、湯船につけて両手両足の血管を切り裂き出血させて殺したりしたことがあるというのを本で読んだことがあるのを思い出したり、またカトリックにくわしければもっと深い見方ができるのかもしれないな、など、少し余計なこともつい考えてしまう、そんなところもありました。そこがいいのか、それともホラーとして観た場合は弱いのか、これは観る人によるでしょう。私は、弱い、と思った。