デビルズ・リジェクト マーダー・ライド・ショー2

DVDで鑑賞。
テキサスのど田舎に住む殺人鬼一家の話。
テキサスの田舎町。若者を連れ去り次々と殺害していたファイアフライ家を警察が急襲。森に出ていたタイニーは難を逃れるが、他の家族は警察と撃ち合い死者も出て、母親は逮捕されてしまう。家の中にいた家族の内、兄のオーティスと妹のベイビーだけは脱出に成功。逃亡した兄妹二人は父親のキャプテン・スポールディングと合流し、殺人逃避行を開始する。
アメリカン・ホラー・ファンにとっては聖地ともいえるテキサスの田舎。日本人の想像を超えた広大など田舎。人影がほとんど見えない景色が延々と続き、たまに人がいるとたいてい銃を持っている。映画の中の光景だから、現地に住むアメリカ人が観ると「なんじゃこら」なのかもしれないが、日本のお家でDVDで観ていると、とても異国のロマンを感じてしまう、テキサスのど田舎。
前作『マーダー・ライド・ショー』では、キャプテン・スポールディングが経営するエド・ゲインやアルバート・フィッシュの等身大フィギュアが陳列された見世物小屋や、キチガイぶりがメルヘンチックなまでのファイアフライ一家の造形が見事で、スラッシャーものに加えて昔の低予算SF・怪奇ものの楽しさもちりばめつつ、出血を惜しまないサービスぶりだった。ファイアフライ一家の母親がカレン・ブラックだったのが、このありえないキチガイ一家に面妖なリアリティを与えていたのも見逃せない。
今回、母親役は、カレン・ブラックにくらべると甘口顔の女優が演じており、そのせいかすぐ逮捕されてしまった。そして映画は、ホラーというより、ニューシネマみたいな逃避行もの、同時に70年代の暴力映画を思い出させる仕上がりになっている。音楽と映像が相乗し、話の運びも無理を感じさせず、ところどころ笑える場面もあり、だれることなく全編楽しめた。ロブ・ゾンビ、快調。
登場人物の一人がチープ・トリックの1stアルバムのTシャツを着ているのがちょっとよかった。チープ・トリック、1stが最高、私はそう思ってるから。監督がどんなつもりで着せてたのかはわからないけども。
殺人鬼一家の中では、シド・ヘイグ、ビル・モーズリイもいいんだけど、ここではシェリ・ムーン・ゾンビの怪演を讃えたい。半径1km以内には絶対近づきたくない金髪美女。すらりとした体型で陽性の動きがはつらつと光る美女なのだが、同時にナチュラルにキチガイな雰囲気を発散、高めの少女っぽい声が効果音的にキャラを盛り上げる。『1』では、カウボーイ・ハットがすごく素敵に似合っていた。
しかし、この『2』では、ファイアフライ一家に対抗するかのように、ウィリアム・フォーサイス演じるテキサス・ハードコア・シェリフが自らの狂気にぐんぐん燃料投下、どっちが被害者なのかわからなくなる展開になってしまうのですね。シェリフがそうなるのには理由があるのだが、徐々に官憲に追われるファイアフライ一家の家族愛がきらめきはじめるのです。ラスト、だまされたような気分のままこれ泣ける話だなと一瞬思ってしまいましたよ。キチガイに涙はいらないのはわかってるんだけどさ。ロブ・ゾンビ、憎い男だ。やられたよ。
私は、北野武よりロブ・ゾンビが好きだな。フランス人がなんと言おうと知ったこっちゃない。私はゾンビが好き。