ブラック・サンデー

DVDで鑑賞。
アメリカに潜入したアラブゲリラをモサドが追う。
冒頭、ベイルートの空港から西欧風の女性が街へ出て、郊外の屋敷へ向かう。屋敷にはアラブ・ゲリラ組織「黒い九月」のメンバーが集まっていた。ベトナムで捕虜になった米兵の映像を観ながら相談、女性メンバーのダーリア(マルト・ケラー)は、アメリカでのテロを計画していると語り、犯行声明を録音しておくことにする。
一方、ゲリラの活動を察知したモサドも動いていた。モサドは屋敷を襲撃、ダーリアは辛くも逃げ延びるが、犯行声明を録音したテープはモサドが押さえた。
そして、アメリカの風景が映る。アメリカン・フットボールの試合に沸く大観衆、スタジアムの上を横切る飛行船の影が通り過ぎる。テレビ中継のために飛行船が使われているのだが、パイロットのランダー(ブルース・ダーン)は、元軍人で、過去にベトナムで捕虜になったことがあった。
このランダーのもとにダーリアがやってきて、テロの準備をはじめる。
モサドのデビッド・カバコフ(ロバート・ショー)は、ベイルートの屋敷を襲撃した際、ダーリアの顔を見ていた。押収したテープに録音された犯行声明からテロ計画を知り、アメリカに潜入したダーリアを追うことになる。
1970年代に流行したパニックもののひとつとして宣伝されていたが、日本では公開が見送られたと記憶する。映画の内容が政治的に物議を醸す恐れがあるというのが理由だった。アメリカとイスラエルとアラブと、そして日本の関係を考えさせる逸話。
映画の方は、話はよくできており、役者がうまく、正攻法でドラマが進んでいくのだが、海でのボートの追っかけや、ランダーが手造り爆弾を試して威力に満足する場面など、もっと映像として、絵として、迫力があって欲しいところが物足りない印象で、いたずらにどぎつくなってないから現実感があるでしょう?という見方もあるのかもしれないけれど、私はうーん、もう一押し!と思ってしまったよ。
ただし、飛行船はすばらしい。ゆったりと空を移動しているように見える大きく膨れ上がった雄大な姿、その巨体がスタジアムに圧し掛かるように迫ってくる場面、ヘリコプターから飛行船にロープを降ろしてひっかけて釣り上げようとするカバコフは、空を泳ぐクジラを釣り上げようとする爆裂オヤジみたいで、そういや演じたロバート・ショーは、『ジョーズ』ではサメを追っかけてましたね。
マルト・ケラーは、ヨーロッパの女優ですが、このころはよくハリウッド映画にも出ていた。大柄な美女だけど、アップになると顔がごっついね。この役にはそれがぴったりでした。ブルース・ダーンは、『モンスター』にベトナム帰りのおじいさんになって出てましたね。この映画では若いし、うまいです。
アクションシーンにもうちょっと迫力とスピードが欲しかったと思ってしまいましたが、ダーリアが何故ゲリラ活動に参加したのかをちゃんと語っていて、そのせいで、このころからなにも変わっていないのではないかというどんよりした現実をも思い出させてくれる映画になってました。