暗黒街の弾痕

DVDで鑑賞。
無実の罪を着せられた前科者が、妻と共に逃避行する。
ジョーン・グレアム(シルヴィア・シドニー)は、前科三犯のエディ・テイラー(ヘンリー・フォンダ)と恋に落ち、結婚する。弁護士はジョーンを信頼しており、エディが更生して幸せな家庭が築けるよう職を世話してくれた。しかし、些細な手落ちから雇い主の不評をかってエディは失職、前科者への世間の冷たさに傷つく。
やがて銀行強盗が起き、現場にエディの帽子が落ちていた。エディは自分の帽子を盗んだ男がやったのだといい、ジョーンはエディを信じる。逮捕され裁判にかけられたエディは有罪となり、死刑判決。しかし、かつての刑務所の仲間たちの手引きで脱獄を果たし、ジョーンと共に国境を目指した逃避行に出る。
陰影をたくみに活かした白黒の映像美が見事なフリッツ・ラング監督作品。池の水面に映ったジョーンとエディが交わす会話、どしゃぶりの雨の中、傘を開いて立ち止まる大勢の人々の中で襲われる銀行、雨の中立ちこめる煙。鉄格子の影、夜霧に照らされるライト。
行き違いから救われなくなるエディとジョーンだが、ずっと二人いっしょにいるという夢だけは、強引にかなえてしまう。どちらかいっぽうだけでは生きていけない、という運命に殉ずる。
犯罪ものだし、悲劇的な恋愛ものでもあるけれども、シルヴィア・シドニーが演じたヒロインは健気で強いし、ヘンリー・フォンダ扮するエディも、根はいい人だったと思える役柄で、絶望的な状況下で二人が思いを成就したおはなしになっているので後味は悪くない。
脱獄に関しては、エディには刑務所内に友人がいたからとしかいいようがない展開だが、野暮をいうのはやめよう。脱獄する時点でジョーンを除いて誰も信用できなくなってしまったエディの孤独を思おう。古い白黒映画の中の若いヘンリー・フォンダは、ジェーンやピーターよりもきれいに見えた。
最後の車での逃走中、運転席から見た絵が続くあたりは緊迫感とスピードがあり、その後作られた映画にも影響を与えてるんだろうなと思った。