春にしゃがむ

新年度になったので古雑誌を整理しようとしているのだが、なかなか進まない。
2005年度は『論座』をずっと毎月買っていて、なぜかといえば小池寿子「ヨーロッパ「死の舞踏」巡礼――運命の車輪」という連載が好きだったからだ。死を意識することで生を見詰め直そうとする昔の人の思いが込められた図像を追って、ヨーロッパ各地を旅しながら書かれた文章がおもしろくて毎月楽しみにしていた。連載当時は、絵の写真をカラーグラビアで見せてくれればいいのにと思ったりもしていたけど、読み直してみると、白黒の小さい写真だからかえって想像力がかきたてられるのかなと気がついたり。
2005年度の『論座』は、号によってはそのお目当ての連載しか読んでなかったり、また読んでたはずの記事も内容は既に脳外物質化していたりして、今また新鮮に読めてしまう。アホなのかお得なのかもはやよくわからない。
そういうわけで、ついつい古雑誌を読みふけってしまい、部屋はいっこうに片づかないのだが、それにしても片づけ途中に古雑誌を読み返す時はなぜいつもしゃがんだ体勢になってしまうのか。
自分でも合理的な説明がつかないのだが、なぜか、しゃがむのだ。
古雑誌の中には、『SIGHT』vol.16なんていうのもある。2003年夏号だが、特集は「戦争に勝って、すべてに負けたアメリカ」。
その中にはマドンナのインタビューが載っていて、当時放映前に「反ブッシュ的だ」と非難され自粛に追い込まれた「アメリカン・ライフ」のプロモーション・ビデオについて話していた。コンセプトの説明をして、最後、マドンナはこう締めくくっている――「自分の国に敬意を表すにはいろんな方法があるはずで、国に異議を唱えたからって即、非国民(un-American)なんてことになるわけがないわ」。
アメリカン・ライフ」のビデオ、YouTubeに出てた。

戦争のエロさとグロさと戦地で傷つく人々とそれを取り巻く者たちと。
単なる反戦ものには収まらない作品になってる。
マドンナ、すごい。
イラスト:blue daisy