13日の金曜日

DVDで鑑賞。
クリスタル・レイクで、若者たちが殺人鬼に襲われる。
1980年。クリスタル・レイクのキャンプ場で若者たちが次々と殺害される。愛する息子が溺死したのはキャンプ場の監視員が任務を怠ったためだと恨み、狂ったボーヒーズ夫人。最後に生き残った女性が彼女の首をはね落とした。
現代。クリスタル・レイクの近くにやってきた5人の若者。夜になり、キャンプをはった彼らは謎の男に襲われる。
それからしばらく後、クリスタル・レイクの近くの別荘に、若者が友人たちを連れてやって来る。彼らは、一人の青年に出会う。青年は、この地域にキャンプに来て行方不明になった妹を探していた。若者たちも行方探しのビラをもらう。
若者グループと妹を探す青年は交錯しながら、クリスタル・レイクに引き寄せられていく。
人気シリーズ『13日の金曜日』のリメイク。2009年度版である。いかにもインディペンデントなチープでヤクザなノリが楽しかった元祖にくらべると、全体に金がかかっており、30年かけて醸成された『13日の金曜日』伝説を背後にすえた作品に仕上がっている。
光と影をうまく活かして劇的な絵を撮っており、安っぽい印象を与えない。特殊メイクは技術的に格段の進歩があったのだろう、ケガしたり流血したりする場面もリアル、そして人体損壊がいたずらに見世物として突出しないよう、見せ方に工夫しているのがうかがえる。昔のシリーズにくらべると全体にスマートさが感じられ、娯楽として見る残酷劇としては程よくまとまっている、と言えるのかも知れない。
しかし、なにかが足りない。この物足りなさ、前にもどこかでかんじたんだけど、どこでかんじたんだ、と思い出してみると『テキサス・チェーンソー』。あれは『悪魔のいけにえ』のリメイクだったんだが、製作:マイケル・ベイ、監督:マーカス・ニスペルというのがこの作品と同じなのね。
悪魔のいけにえ』に関しては、リメイクしたところで元祖の味わいが出るはずもないことは最初から見えていたから、『テキサス・チェーンソー』はあの設定を活かしてテキサスの田舎を舞台に何か新鮮味のあることをやってくれればいい、くらいの気持ちで見たんだけど、金がかかってて、絵もきれいすぎるくらいきれいで、美術は非常によくできてるんだけど、全体にめりはりに欠け、ショックシーンがいまいち盛り上がらず、最後まで生き残る女性を演じた女優がきれいな人だったので、スタイルのいい彼女が走り回るのを眺めるのが見所かな、そんな映画だった。保安官の役で『フルメタル・ジャケット』の鬼軍曹が出てくるのが、いかにも助からない雰囲気を固めるのに効いていて、ちょっとよかった。
テキサス・チェーンソー』も『13日の金曜日』も、旅先の人里離れた場所で若者が正体不明の怪物に襲われるという、おとぎ話によくあるパターンのおはなしだ。人体損壊が見せ場になるとはいえ、映画全体がメルヘンの世界にも見えるので、見た後、不快感が尾を引くこともない。レザーフェイスやジェイソンは、人間を超えた魅力を放つアイドルにもなれる。
テキサス・チェーンソー』では70年代、80年代のアメリカ映画から取り込んだと思しき場面や台詞がいくつか出てきて、元ネタの映画を思い出したりもしたけれど、『13日の金曜日』では、過去のシリーズ作品を思い出させる部分が多かった。『13日の金曜日』伝説をたどるたのしさがあったというべきか。
しかし、いまひとつたのしさが盛り上がらなかった不満が残る。ジェイソンが登場したり、若者が殺害されたり、ショックを与えてくれるはずの場面がショッキングに感じられない。これは演出がよくないからではないだろうか。
音楽も、元祖のスラッシャー映画にしか使い道がないようなテーマ曲のほうが、キンキン迫ってきてよかったように思う。
しかし、とにかくジェイソンがまた出てきた、それをよろこべばいいのかもしれない。彼がホッケーマスクをつけて鏡を見た時、「うん。いい。似合う。その調子♪」と素直に思えたから。レザーフェイスにくらべると、ジェイソンはゴジラ的キャラ度が高いので、続編も作りやすいと思われる。続編を作るのなら、別監督でお願いしたいです。