第26回 四国こんぴら歌舞伎大芝居 第二部

こんぴら歌舞伎の第二部(午後の部)を観て来ました。千秋楽。金丸座周辺は桜の季節は終わり、木々に新緑が目立っておりました。
演題は『通し狂言 敵討天下茶屋聚』。敵討ちのおはなしです。芝居の中心になるのは元右衛門という小悪党。チンピラっぽい悪役で、ボスではありません。最初は敵討ちを目指す主人についているのですが、酒乱がたたって勘当、その後、敵の手下になってしまう困った奴。三枚目的な性格が濃く、市川亀治郎が演じて笑わせてくれます。亀治郎は片岡造酒頭も演じており、二役の早変わりも見せてくれました。
夜中に元の主人の家に忍び込み、兄を殺害、金を奪う元右衛門。藤棚にのぼって蚊に刺されながら抜き足差し足、暗い屋内での犯行課程、パントマイムを見ているようなおもしろさ。
元の主人も殺害した後、敵討ちする側に発見され追かけられます。逃げる元右衛門、客席にまで降りて来ます。追っかける側も客席の間まで探しに来る、元右衛門ははしごで二階席へと登って逃げる。そして二階席から舞台に飛び降り、附け打ちになりすまし、元右衛門が打つ附けに探している側の動きがのせられたり、ライブ感溢れる盛り上がり、コール・アンド・レスポンスな世界が展開しました。
町人やチンピラがファンキーに入り乱れた芝居の最後は、武士が出てきて絵的にすっきりとしたまとめ、音楽も締めくくりにふさわしいかんじ。
回り舞台や、背景の幕による場面転換も、舞台の楽しさを見せてくれました。
プログラムの解説によれば、『通し狂言 敵討天下茶屋聚』の元ネタは江戸時代に写本で流布した実録体小説。天下茶屋の敵討ちが本当にあった事件なのかどうかは不明だそうですが、実録体小説は残っており、そこから芝居が生まれということです。
実録体、実話、黒い報告書、そんなかんじでしょうか。虚実とりまぜおもしろおかしく庶民の娯楽に供される物語。実話の態を装った虚構も実録物として楽しまれる。そして、俗悪な中に真実の光がきらめくこともあるんだわ。あなどれないぞ、大衆娯楽。
江戸時代からこのへんは変わっていないということなのかな。現在、江戸時代の歌舞伎と似たようなことをやってるのは、ハリウッドになるんじゃないでしょうか。ハリウッドより歌舞伎のほうが洗練されてるし、トンデモ度も上回っているようにも見えるんですね。今年のこんぴら歌舞伎も、おもしろかった。観られてよかったです。
第二十六回 四国こんぴら歌舞伎大芝居