治験という貧困ビジネス

週刊金曜日』2010年6月11日号より。31歳の男性からの投書。

雇用情勢の悪化によって、流転する若年失業者たち。私は、その若年失業者として生活して三年近くになる。改善の目途が立たない失業問題、そして、今月の株式の暴落。この時代を反映してか、あるネットのサイトに若者の応募が集中している。それは、新薬やジェネリック薬の治験だ。多くの製薬メーカーでは、この病んだ国民が服用する、「抗うつ病」の開発が盛んになっている。ある治験を申し込んだ友人によると、申込会場には定員を上回る若者が集まった。その中でも、派遣ギリに遭った若年失業者の志願者が多かったという。報償金として支払われる「負担軽減費」は二〇万円台が相場という。この負担軽減費が、皮肉にも、若年失業者の貴重な収入源になっているのが実情だ。
私は学生時代に、海外のある国で発行されている、日本語新聞を購入した。広告欄に日本人留学生目当ての、「治験募集」が大きく掲載されている。当時の私の認識では、「治験」に参加することは、想像外な世界の話。しかし、その世界との境はなくなったのだ。(後略)
(引用元:『週刊金曜日』2010年6月11日号)

スティーヴン・キングファイアスターター』を思い出した。これは、学生時代に学費稼ぎのため新薬の治験に応じた二人の男女が結婚して、生まれた娘が超能力者になるというおはなし。娘はその強大な超能力ゆえに権力に追われることになる。
キングは、『ファイアスターター』は小説として楽しんでいただければ本望だが、政府が新薬の人体実験を応募者によく説明しないまま行っていたことには抗議するとあとがきに書いてあったように記憶する。
アメリカの娯楽小説を持ち出して、話が飛びそうになってきたが、うつ病患者が急増しているというだけでも異常事態なのに、さらにそこから失業者が製薬会社に利用されるような余波が広がっているのだ。
民主党は「国民の生活が第一」と言って政権を奪取した。貧困対策に本気で取り組んでもらいたい。
菅新政権 消費税増税 閣僚大合唱/誰にとっての“強い財政”か - 2010年6月11日(金)「しんぶん赤旗」
テレビのニュース、特に民放のニュース番組では、消費税増税を煽っているとしか思えない放送が目立つ。たとえば、子ども手当ての支給がはじまったと伝え、子ども手当てを受け取った母親を取材する。「こういうのではなくて、もっとほかに使わなくてはならないところがあるのでは」と答える映像が、二人くらい続けて流れる。そして、財源がどうのこうのと話をつないで、消費税増税は必要、というまとめ。
民主党政権はいまのところ「税制全体の見直し」という言い方をしているのだが、テレビのニュースで現在の税制がどのようになっているのか、これまでどのように変えられてきたのかなど説明されることはない。
マスメディア上で発言する有名人は、すべて勝ち組であって、報道番組で勝ち組の自分たちに都合のいい政策を宣伝をしている。そうとしか見えない。
テレビでは、夏の参院選も、争点は「消費税増税」にされてしまうだろう。せめて新聞や雑誌では、貧困問題、税制の見直しについて大きく取り上げてもらいたい。