DVDで鑑賞。
熱帯魚屋店主が同じ熱帯魚屋を営む殺人鬼と出会う。
静岡の田舎町。熱帯魚店を営む社本信行（吹越満）は、若い後妻と先妻の産んだ娘が不仲で家庭の雰囲気が暗くなるのをどうすることもできないでいた。ある日、娘がスーパーで万引きをしてしまうが、偶然その場に居合わせた同業を営む村田（でんでん）がスーパー店主との間を取り成してくれて大事にならずに済む。村田は社本と同業だということでつきあいが始まり、社本の娘は村田の経営する熱帯魚店で働くことになる。社本一家を愛想よく迎える村田の妻・愛子（黒沢あすか）。しかし、やり手社長・村田には、裏の顔があった。……
日本の地方の風景がこのドラマの背景を満たす。のどかさと殺伐、平穏に潜む狂気、そんなものが自然に溶け合い空気となった、日本の田舎町。
天体の世界に逃避しながら日々をやり過ごす社本の前に現れたのは、暗い子供時代を乗り越え自立し過ぎたいけいけオヤジの村田。独自の考えと場当たり的な実際性で犯罪行為も正当化する。傍から見ていると狂ってるのだが、成り行きから村田のペースに巻き込まれてしまった社本が呑まれてしまうのもわかる気がしてしまう村田のパワーと状況なのだった。クレイジーなのにリアリティがある映画世界。
村田を演じたでんでんがすごい。狂気が自然に見えるのは「うわー、いるいる、こんなオヤジ！」となる演技がうまいから。また、村田の妻・愛子役の黒沢あすかも大快演。登場したときのやさしそうな声音から、すごくこわい。うわこの人昔ヤンキーでケンカ強かっただろうなと悟らずにはいられないような、絶妙なこわさ。しかもこわいんだけれども基本純心な体育会系的人の好さがあって、でもこういうの転がり方で最凶になるんだよね、基本悪くないまま。
社本の妻を演じた神楽坂恵は説得力のある巨乳ぶりを見せつけ、娘役の梶原ひかりもリアル。
主役の社本は実質狂言回しに見えるのだが、吹越満はどこにでもいそうな男の揺れる内面をうまく出していた。これは社本の自分探しの物語だったのか。
この映画の話は、埼玉愛犬家殺人事件から着想を得て作られたそうだが、死体を消滅させてしまうと、殺人事件として立件するのがむずかしくなることがよくわかる事件だった。
大阪で自称犬の訓練士が起こした事件と混同されたりすることもあるが、埼玉は「アフリカ・ケンネル」の経営者が首謀者。埼玉愛犬家連続殺人事件は、遺体なき殺人と呼ばれていた。
