アウトロー

元軍人による無差別狙撃事件の真相を究明すべく、元憲兵・ジャック・リーチャーが乗り出す。
ピッツバーグの郊外で白昼5人が狙撃される。無差別殺人事件と見做され、発射された6発の弾丸のうち人に当たらなかったものから所有者のイラク帰還兵ジェームズ・バーが割り出され逮捕される。捜査官から自白を迫られたバーは、ジャック・リーチャーを呼んでくれと言うが、囚人に暴行され昏睡状態に。一方、テレビのニュースでバーが事件の容疑者とされたことを知ったジャック・リーチャー(トム・クルーズ)は、自らピッツバーグに赴き、事件の真相を探り始める。……
物語の出だしがすばらしい。市中を走る車、有料駐車場、コインを差し込む指、照準を定める狙撃者の視点、何も気づかぬまま道を行く市民。事件の報を受けて現場に駆けつける警官、惨事の現場、拾い上げられる残留物、そして容疑者逮捕。サイレント映画の巧みを思い出させる、映像の語り口。
容疑者がジャック・リーチャーの名前を出してからは、ジャック・リーチャーとは何者なのか、捜査官が調べたことを報告する、そこにいまは渡り鳥状態にある元軍人リーチャーが現場へと向かう様子が挟み込まれ、人物像のあらましが伝えられたところでリーチャーに扮したトム・クルーズのお顔が画面に登場する。
ここまで、一気にに見せられて、これを見られただけでも映画館に行ってよかったと思いました。ああ、トム・クルーズ
あとは謎解きとアクションになる。狭い空間で男がもみあうドタバタ的な場面と、リアリズムを重視したカーアクションなどが印象的。一対一の殴り合いも正統派アクション路線で決めてくれています。謎解き自体には新味はないが、イラクで軍務をまじめに果たした筈の帰還兵が抱えた悩みと、それを知って彼の身を案じつづけていた元憲兵、というのが妙味か。
全体としては大昔の小林旭の渡り鳥シリーズを彷彿とさせるようなおはなしになっており、トム・クルーズのスター顔が物語を支えている。正義を尊ぶ渡り鳥・ジャック・リーチャー、ひょっとしてシリーズ化されるのかな。
弁護士を演じたヘレン・ロディンが好演。巻き込まれる若い女性サンディ役のアレクシア・ファストも見事。リーチャーのために一肌脱いでくれる元軍人を演じたロバート・デュバル、さすがです。悪役でドイツの映画監督ベルナー・ヘルツォークも出ています。