愛を読むひと

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少年時代につきあった女性がナチ戦犯だったことを知る。
第二次世界大戦後のドイツ。15歳のミヒャエル(ダフィット・クロス)は21歳年上のハンナ(ケイト・ウィンスレット)と知り合い、つきあうようになる。ハンナは情事の前に小説をミヒャエルに朗読してもらうのが好きだった。しかし、ある日突然ハンナはミヒャエルの前から姿を消す。
大学で法律を学ぶようになったミヒャエルはゼミの一環でナチスの戦犯法廷を見学に行く。そしてハンナがそこで戦犯として裁かれているのを知る。……
中年になってからのミヒャエル(英語読みだとマイケル)を演じているのはレイフ・ファインズ。あの少年がレイフ・ファインズ化することに無常を感じないわけにはいかない。ハンナは最初から若くないし、老けメイクもよく、ケイト・ウィンスレットがうまいところを見せてくれる。アカデミー賞受賞も納得の名演技だ。
私はこの映画の主題とはちょっとずれたところで涙が出そうになるほど感動した。刑務所内でハンナが読み書きを必死で習得していくところだ。自分が英語が聞き取れるようになりたいと発音練習をしひたすら英語を聴き、書き取りをしてきたことと重ね合わせてしまったのですね。舞台はドイツなのだけれども映画が英語作品なのでハンナが朗読テープを聴いて読もうとする本が英語なのです。日本人が英語の聞き取りに苦労するのとはまたちがったことなのはわかるのですが、やった! やったね、ハンナ! と拍手したくなったよ。
というわけで、ハンナ、もともとインテリでもないし、出所がきまって会いに来た主人公に、戦時中のことをどう思っているのか聞かれても、あまり観念的な感想を述べたりしません。主人公にはうーんかもしれないけれども、ああいうところもリアルだと思いました。そして、言葉でうまく言えないせいで行動に出てしまうあたりもね。
ミヒャエルと結婚して一女をもうけて離婚した女性にしてみれば、ふざけてるんじゃないよな話だろうし、劇中でもミヒャエルの顔も見たくないくらい怒っているらしいことがうかがえるわけですが、娘がりっぱに成長しておりまして、またえらく出来がよい子のようで、このへんもミヒャエル運がよすぎるよな。
「さすらいの女神(ディーバ)たち」のマチュー・アマルリックのようなだめ男の愛嬌がこの映画のレイフ・ファインズには皆無なので、鼻白むところもないではありません。役柄からいって仕方ないのでしょうが、ミヒャエルの元妻が、ミヒャエルよりずっとずっと素敵な男性と仲良くなれることを祈ることにします。
字が読めない女性が主人公の映画、「沈黙の女 ロウフィールド館の惨劇」というのがありましたね。こちらは文字通り惨劇となる犯罪ものでしたが、原作はルース・レンデル『ロウフィールド館の惨劇』、英国の女流ミステリです。小説のほうがおもしろかった記憶がありますが、フランス製の映画版もなかなかよかったですよ。