レバノンとイランの映画監督

 

世界 2019年 02 月号 [雑誌]

世界 2019年 02 月号 [雑誌]

 

 

 

世界 2019年 03 月号 [雑誌]

世界 2019年 03 月号 [雑誌]

 

 『世界』で連載中の四方田犬彦「映像世界の冒険者たち」で、2019.02号(no.917)でレバノンの映画監督ジョスリーン・サアブ、2019.03号(no.918)でイランの映画監督モフセン・マフマルバフが紹介されています。映画に興味のある方、ぜひ読んでみてください。

記憶のための戦い - ジョスリーン・サアブ (連載第10回)

2017年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で特集を組まれたジョスリーン・サアブだが、日本での知名度はまだまだ低い。彼女はドキュメンタリーだけでなく、ミュージカル仕立ての劇映画なども手掛ける映画作家で、写真、ミクストメディア、インスタレーションといった活動もしている。現在は日本赤軍についての資料を収集中という。

少年テロリストが監督になるまで - モフセン・マフマルバフ(連載第11回)

日本では邦訳がでた『アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない 恥辱のあまり崩れ落ちたのだ』の著者として知られていそうなイランの映画監督。1957年生まれの彼は、少年時代はパーフラヴィ政権の腐敗に憤り一時期イスラム原理主義に傾いていた。小説を書いたりした後、映画を作るようになる。1980年代後半にイランの映画が国際的に注目を集めた時、アッバス・キアロスタミと共に世界的に名を知られるようになる。キアロスタミとは対照的に、映画に政治的メッセージを込めることをためらわないマフマルバフの変遷を追う。

 

 

アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない恥辱のあまり崩れ落ちたのだ

アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない恥辱のあまり崩れ落ちたのだ

  • 作者: モフセンマフマルバフ,Mohsen Makhmalbaf,武井みゆき,渡部良子
  • 出版社/メーカー: 現代企画室
  • 発売日: 2001/11/01
  • メディア: 単行本
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橋本治死去 その2

橋本治の死去について多くの人がネット上でコメントしている。訃報に接してまさかとか早すぎるとか愛読者としてつぶやいている方も多いのだけれども、私はおどろきはなかった。橋本治が六十代になって難病を患い、また昨年はガンの手術を受けたりした闘病記を読んでいたせいもあるけれども、それよりも前から、彼は意識的に生きていることを肯定しようとするような言辞をこぼすことが目立ちだしていた。手元に載っていた本や雑誌はないので私のうろんな記憶だけになるけれども、生きよう、この世界にはまだまだうつくしいものがある、とか、三島由紀夫の生原稿、そこに万年筆でていねいに書かれた旧仮名遣いの文章を見て、三島由紀夫は死に方がああだったせいでそう思われないことが多いが、最期まで生きようと努力していたのだ、そしてそれより尊いものはないのだ、とか、そういう趣旨のことを、あの橋本治の文章で明晰につづっていた。それを読むと、橋本治の文章を読んだときにしか触れられないうつくしさを感じ、同時に、橋本治にあえて気力を奮い立たせるほど生きるのがいやになる世の実相の側に自分は棲息しているのだなと思わされる。だから、文章を読むことの悦びは得られても、自分が生きるための勇気をもらえたとはならない。ふと、淀川長治が「ゴダールは嫌いだけど、彼の撮る空だけは好き ゴダールの撮る空だけは美しい」と言っていたことを思い出す。私は、ゴダールは好きなのだが、橋本治のいい読者には成れない/成る資格がない者なのだろう。

三島由紀夫はものごころついたころには死んでおり、読みだしたのは死んだあとだったから、余計なことは考えないまま、読んだ本がおもしろく読書が楽しかったので、ファン気分で「私は三島由紀夫好き♪」と平気で言える。たしかに三島由紀夫橋本治は似たところがあるな、とは思うのだが、私は橋本治の小説は苦手、評論や戯曲にくらべると評価が分かれるしそうなるのがすごくよく分かる三島由紀夫の小説は大好きだ。そして、橋本治が『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』を書いてくれたことは、三島由紀夫ファンとしてたいへんうれしかった。三島由紀夫はその点で幸運だった、橋本治がいたのだから。

さて、橋本治について、橋本治三島由紀夫について書いたように“「橋本治」とはなにものだったのか”というような本を書いてくれる男はいるのだろうか? そういう男はいるんだろう、でも、たぶんその男の子はまだ学生で、『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』や現在大ヒット中の映画「ボヘミアン・ラプソディ」が三島やフレディが死んで三十年ほどは経過してから世に出ているのを見ると、橋本治についてのそういう本がでるころはもう私はここにはいないだろう。

 

 

「三島由紀夫」とはなにものだったのか (新潮文庫)

「三島由紀夫」とはなにものだったのか (新潮文庫)

 

 

橋本治死去


this.kiji.is

一時期けっこうはまったのでよくも悪くも影響を受けているのは自覚しているが、私自身がアホだったりしたせいで火傷炎症を起こしたりもしたのだろう、他の読者のように素直にほめたり感謝したりがまだできないところがある。

基本超一流の副読本というか最高級の雑誌の色ページみたいな物件だった筈だが、職業インテリが適切に位置づけできない、もしくはしないことで橋本治を場面によって適当に利用することがあるのも、むかつき要素。彼の周辺にうまく距離をとりつつ棲息する女性も苦手だった。

そういう極私的感想はともかく、読みやすいしおもしろいしイラストも描ける強みが染みてくる『歌舞伎画文集』の名が、橋本治と共に浮上することがあまりないのは前から不思議です。図書館にあると思うので、興味のある方は見てみてね。

 

橋本治歌舞伎画文集―かぶきのよう分からん
 

 享年七十。安らかに眠れ。

松本弘(編著)『現代アラブを知るための56章』明石書店

 

現代アラブを知るための56章 (エリア・スタディーズ120)

現代アラブを知るための56章 (エリア・スタディーズ120)

 

 本書は「現代アラブとは何か」という問題について、答えを提示するのではなく、その手掛かりをできるだけ広範囲に列挙することを目的とした。「エリア・スタディーズ」のスタイルが多数の短い章であるため、これを最大限生かして文化や歴史にとどまることなく、また政治や経済にもとどまることなく、思想もお化けも含めて「アラブ」を論じることを試みた。

(引用元 :松本弘『現代アラブを知るための56章』明石書店 p.4)

 目次はこちら 現代アラブを知るための56章 - 株式会社 明石書店

 

各トピックが短い章となっているので、興味のあるところから読んでいけばいい、どなたにも読みやすいものになっています。アラブに関心のある方、ぜひどうぞ。

アラブ、もともと詩の朗読が一般人にも身近なせいか、ラップは若い人に人気があるようです。個人的にはアラビア語はラップと相性が良い気がする。もちろんバンド形式のポップスもあります。いまなら日本からでもYouTubeで探せば見られます。この本を手引きにして見てみてください。

市原悦子死去


www.shikoku-np.co.jp

まんが日本昔ばなし」のナレーションをまず思い出しますが、映画やテレビドラマでも子供の頃からよく見ていて、ふしぎなくらい雰囲気がずーっと変わらない方だったなと記憶します。家政婦とかお母さんとかの役が多かったですが、あの声としゃべりかたのせいなのでしょうか、常にちょっと浮世離れした風情があって、そのせいでどんな下世話な役柄であっても劇の中の人というか、ほんわりとした夢をかんじさせてくれる女優でした。普段あまり意識してなかったですけど、自分は大ファンだったのだなと訃報を聞いて知らされた次第です。安らかに眠れ。

 

 

 

あけましておめでとうございます フレディと井田真木子とエイズと


Queen - I Want To Break Free (Official Video)

 

今年もよろしく。QUEEN | クイーン - UNIVERSAL MUSIC JAPAN

 

映画「ボヘミアン・ラプソディ」大ヒットで、クイーン、とくにフレディに関心を持つ人が増え、フレディ関連本もよく売れているようです。

フレディを偲びつつ、井田真木子の本を読む、というのもありですよ。

 

井田真木子 著作撰集

井田真木子 著作撰集

 

 「同性愛者たち」では、1985-87の日本でのエイズパニックと、エイズ予防法の制定とそれに反対する人々の運動、その後、HIVに感染した同性愛者によるセカンド・カミングアウトの動きなどが描き出されています。

ノンフィクション作家をノンフィクション化する「かくしてバンドは鳴りやまず」では、第一章でカポーティとランディ・シルツという二人の同性愛者であった作家・ジャーナリストが取り上げられていますが、シルツは『そしてエイズは蔓延した』の著者なので、1980年代のサンフランシスコのゲイシーンと、そこでのエイズパニックの様子が読めます。

関連する記事として、こういうブログを見つけました。井田真木子を読む際の参考になりそうですね。とくに、上の「同性愛者たち」に絡んだ記事として

blogs.yahoo.co.jp

追記 2019-01-13

エイズについては、次のブログがわかりやすく説明してくれていました。

tetsujinsan.blog8.fc2.com

 あと、まずこういうサイト見るべきでしょうか。

www.gov-online.go.jp

api-net.jfap.or.jp

allabout.co.jp