『世界』2021年12月号 奥山俊宏・畑宗太郎「パンドラ文書を解読する(上)」

 

ICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)が入手したタックスヘイブンと各国要人の関りを示す秘密電子ファイルを基に進めた調査報道。

 この「パンドラ文書」取材プロジェクトには、日本から朝日新聞共同通信が参加、記者は「砂漠で砂金を探すような作業」を経て取材を始めました。

 『世界』12月号は現在のジャーナリズムに苦言を呈する記事が多かったのですが、この記事はジャーナリストでなければできない調査報道によって成果が出た例を描いています。

 どのように調べていったのかが分かりますし、読み物としてはミステリ的なおもしろさもあります。

 つづきはもうすぐ発売される『世界』2022年1月号に載ります。12月号と合わせて、ぜひ『世界』で読んでみてくださいね!

 

 

『世界』2021年12月号 「亡所考」と「いま、この惑星で起きていること」

 

北條勝貴「亡所考 第12回 水産市場の〈地霊〉」

今回の亡所は築地市場跡地。築地が亡所になって三年。現在、跡地はコロナ対策の最前線に用いられているとか。そして、築地→豊洲への移転は、日本だけでなくアジア規模で展開する水産市場の開放型市場の解体→閉鎖型市場への移転という再整備の一環と見なされるという。具体的にはどういうことかくわしく書かれています。

 

森さやか「いま、この惑星で起きていること 24 暗く、熱くなる地球」

ニュースで話題になる気象のことを、くわしく説明してくれるので毎回おもしろい連載。今回は、地球が暗く、熱くなってる、という話が出てきます。何それ? と思った人、ぜひ『世界』12月号で読んでみてくださいね!

『世界』2021年12月号 辛淑玉「「ニュース女子」事件とは何だったのか」

 

ニュース女子」とは「女性のためのニュース&時事問題トーク番組」としてDHCの100%子会社DHCテレビジョンが制作、TOKYO MXTVほかいくつかの地方局で放送されていた。
 「ニュース女子」2017年1月2日の回は、この記事によれば「ネット上にころがるデマを切り貼りしてつなぎ合わせ、反基地運動を笑いながら叩くという、悪意ひなんそのものの番組」で、その中で名指しで誹謗中傷された辛淑玉は一時的にドイツに避難しなければならなくなるほどの損害を被った。
  この「ニュース女子」に対して辛淑玉は、まずBPOに申し立てを行い、TOKYO MXTVからの謝罪を経て、2018年にDHCテレビジョンと司会の長谷川幸洋を提訴、2021年9月1日に東京裁判所で判決が下る。
 くわしくは『世界』12月号をお読みください。
 
 『世界』12月号では、この「ニュース女子」事件の記事をはじめとして、SNSがマスメディアにとっての情報環境となってしまったことから生じる弊害がいくつか報告されていました。
 花岡達朗「関西生コン弾圧と産業労働組合、そしてジャーナリスト・ユニオン(下)」では、この戦後最大規模の労働事件がまともに報道されない大きな要因として、SNSインフルエンサーがまき散らすヘイト的報道をマスコミ側が“社会的現実”と受け取り、触れることを避ける傾向が強まって、ネット上で流れるウワサを取材によって検証し事実を明らかにして伝えるジャーナリズム本来の機能が衰弱しつつあることを指摘。この現状を打破するためにも、日本でもジャーナリスト・ユニオンが必要だと説いています。
 また12月号の特集1「学知と政治」では、日本学術会議任命拒否問題が取り上げられていますが、ここでもSNSで流されたデマが世論に影響を与えたことが述べられていました。
 「メディア批評」第168回では、新聞記者の行動について早々に非を認めて謝罪した北海道新聞共同通信の対応を疑問視していましたが、これも何かあったらSNSにバーッと非難が溢れ返るように見えてしまっているのが関係してそうなんですよね。ツイッターでつぶやく人は記事の見出ししか見てなかったりするし、また、ツイッターは友だち同士でのやり取りにしか使ってなくてそういう炎上とは無縁のユーザーも大勢いたりしてるんですけどね。
 
 SNSの普及による情報環境の変化は、令和オリパラ前夜のネット炎上とも関係してます。マスコミ側が適切に距離を取って、ジャーナリズムというマスコミが持つ本来の力を活かせるかどうかが鍵ですね。
 
 
 現在のネット空間を考えるには、80年代のマスコミバブルを見直すことが必要ではないかとも思いました。五十代以上の人であれば、70年代までと80年代以降では、大きく世の中の風潮が変わったことを覚えているでしょう。80年代のテレビや写真週刊誌、そして90年代のサブカル、いまのネット文化の源流にあるのはそういうものどもではないでしょうか。そして、SNSに特有の口コミ感が加わって、情報環境が大きく変質してしまいました。
 根底にあるのは人がウワサをどう受け止め、それからどう行動するのか、ということで、これはもうメディア環境がどうのこうのを超えた分析が必要になりますし、そしてそういうのって分析したところでどうにもならなさそうなことにはなってくるんですが………
 
 
 辛淑玉の記事を読んで思い出したのは、小林信彦『怪物がめざめる夜』です。いまとなっては牧歌的な物語になってしまうのかな。でも、SNSインフルエンサーは、ずっとマスコミ人が内包してきた欲望をそのまま共有してるんじゃないか。マスコミのキッチュ化みたいな存在なんじゃないかな。
 
 

 

 

花火クラゲ

 

クラゲ、いいね! 😍

『世界』2021年12月号 河合香織「分水嶺2」ほか、コロナ関連の記事

 

河合香織分水嶺2 連載第6回 「病床2割増」計画」

9月に入って感染拡大が収まり、次の波に備えてのコロナ対策について課題が述べられています。病床の確保、そして患者をすべて収容すればいいというものではない、自宅療養が適している人にはそうしてもらって、自宅療養者にもちゃんと医療が介入できるようにするとか、ワクチン、抗原検査キット、中和抗体薬など、ウイルスと闘う武器が手に入った今、どういう準備をしておけばいいか、じっさいの状況の説明と共に専門家たちが語っています。

 HER-SYSというネオコロナ感染者情報を管理するシステムの改良も提案されています。この記事によれば病院で医療者が使う電子カルテPCはいまだにインターネットは使えないようになっているので、全国のネオコロナ感染状況のデータを集めるのがむずかしいままになっているとのこと。(徳島県つるぎ町の町立病院がランサムウェアでアタックされた事件のニュースを読んで、しろうと考えの感想を書きましたが、あれは的外れだったのか orz    #でもだったらなぜサイバー攻撃されてカルテが閲覧不能になったのか???)

 感染拡大が収まった理由はまだはっきりとはわかっていないそうで、一般人は感染対策をしばらくは続けないといけないようです。

 くわしくは『世界』12月号を読んでみてくださいね。

 

 12月号では、口絵でコロナ禍の光景を切り取った写真が見られ、それらの写真を撮った写真家たちのエッセイも載っています。

 ほかにもコロナ関連では

  • 生存のためのコロナ対策ネットワーク「生存のための社会変革を!」
  • 永井幸寿「コロナと法」

が載っています。ぜひ、『世界』12月号をお読みください。

 

 また、『世界』で連載されていた、山岡淳一郎「コロナ戦記」が単行本になってます。まとめて読めるよ!

 

 

 

ロシア拠点のハッカー集団「REvil」

www3.nhk.or.jp

 

徳島県つるぎ町の町立病院を襲ったのは「ロックビット」というハッカー集団だったそうですが、この「REvil」も方々で悪さをしているようです。

 NHKのテレビ番組で見たのですが、アメリカではハッカー集団にランサムウエアで攻撃されたらFBIにすぐ届け出るようにと言っているそうです。でも、企業によっては、サイバー攻撃を受けた事実が露見して株価に影響するのを恐れて、FBIに届け出ず身代金を払う事例がいくつもあったとか。

 サイバー攻撃に備えるには、まずデータをバックアップしておくことでしょうね。ローカルに保存しておくのがいいんじゃないでしょうか。