ギミックとしての「偏微分」と「マルコフ連鎖」

佐藤優もネタにつまってきてるな。それが第一印象。
佐藤優と「偏微分(笑)」・ネタふり編 - liber studiorumの中の資料2-3『世界』2010.3号 対談「小沢vs検察 “権力闘争”を越え、民主主義へ」より。

普通の政治家は、足して二で割って政局を展望する。たとえば普天間基地の移設先は、日米合意では辺野古の沿岸。民主党の沖縄ビジョンでは県外もしくは国外。足して二で割ると「辺野古の沖合」。これが、従来の政治家が下す決断だが、鳩山首相偏微分方程式を用いる。様々な要素――馬英九政権誕生後の両岸関係、米朝交渉、沖縄における反発、小沢氏の疑惑の行方――が全部関数として認識され、五月の出口に合わせて極大化するにはどうしたらいいかを検討している。普天間移設に関しては「年内には決断しない」という「決断」をして、これはマルコフ保全理論の定式どおりだ。

http://a-gemini.cocolog-nifty.com/blog/2010/02/post-5faa.html

このくだりを読んでも、鳩山首相のことを説明するのに "偏微分方程式" や "関数" や "マルコフ保全理論" なんつー単語を持ち出さなくてもいいのに、と思うだけ。
各方面の事情と、そのときの状況を考慮した上で、最善だと考えられる方法を選ぶ、ということは、恐らく政治家なら誰でもやっている。面倒でもそれをやらなければならなくなるのが政治家、特に首相という立場になった人であって、安倍や福田や麻生だってその点では鳩山首相と同じだったろう。
そう考えると「普通の政治家は、足して二で割って政局を展望する」という決めつけが突飛に見えてくる。でもこれは、鳩山首相の "普通でなさ" を強調したいがためにあえてこういう言い方をしているんだろうな。
様々な点に配慮した上で決断を下す、その思考過程が鳩山首相は他の政治家とはちがうのだ。なぜちがうのか。それは彼が工学部出身で、学生時代に数学を勉強していたから。
普天間移設に関して鳩山首相が下す決断に反発する人が出てくるかもしれない。でも、それは、多くの国民には偏微分方程式やマルコフ保全理論の知識がない以上、仕方がない。鳩山由紀夫の思考方法が理解できる人になら、鳩山の決断が理に敵ったものであるとわかる筈である。
こう言いたいのかなあ、佐藤優は。下衆のかんぐりになってますか。
話をもっともらしくするために持ち出したギミックが「偏微分」と「マルコフ連鎖」だった、それだけのことなんじゃないのかなあ。エンタメではよくあることですよね。ハリウッド映画にくらべるとギミックの使い方がこなれてないかんじはするな。だからこの件で佐藤に物申すべきは、数学者じゃなくて劇画原作者なんじゃないか。
鳩山の脳内より、彼が実施しようとする政策に有権者は関心があるわけで、反発が出れば、どうしてそうすることにしたのか鳩山首相が説明しなければならないのですよ。それだけですよ。
それにしても、工学部出身の政治家ってそんなにめずらしいの???