サブウェイ123 激突

DVDで鑑賞。
ニューヨークの地下鉄が、身代金目当ての強盗団に乗っ取られる。
冒頭、ニューヨークの光景。人の波、車の列、交通の動きが早回しで流れるように映し出される。その中で、地下鉄に乗り込んでいく男が何人かクローズ・アップされる。そのうちの一人が、防犯カメラを見据えたあとくるりと背を向け、カメラに映されない状態で運転手に銃を向ける。地下鉄は乗っ取られた。
地下鉄運行司令部で働くガーバー(デンゼル・ワシントン)は、ぺラム123号の動きがおかしいことに気づく。一両だけが切り離され、停止しているのだ。やがて、犯人から無線で連絡が入り、人質19名の命と引き換えに、1000万ドルを市長に用意させろと要求される。制限時間は59分。
警察が動き出し、市長にも事件が伝えられ、ガーバーは犯人との交渉役をつとめることになる。
ニューヨークの慌しい日常が、そのまま臨場感、生々しさを画面に漂わせるのにうまく生かされている。突発的異常事態に対応する人たちの姿を、その周辺からぐるっと回って眺めるようカメラがとらえ、行動に急ぐ人たちの切迫した表情を伝える。
犯人のリーダーであるライダー(ジョン・トラヴォルタ)は饒舌で、その喋り方はつっぱりラッパーを連想させる。事件の展開も、時間が限られる中、アップテンポでどんどん進んでいく印象。映画を見ている間、退屈はしないが、ちょっと疲れる気もした。
時間に間に合おうと金を急いで運ぶパトカーや白バイが、道中で事故を起こしたりする見せ場もある。犯人が撃たれる場面も、血みどろアクションで、サービス満点。また、乗客のノートパソコンからネット上に乗っ取られた車内の様子が流れたりするのも今風。
ガーバーはライダーに気に入られてしまい、警察がやってきてもライダーは交渉役にガーバーを指名、ガーバーは犯人と無線でずっと話す羽目になる。
ライダーはご執心でもガーバーは迷惑なだけという関係だが、ライダーの嗅覚は何かを嗅ぎ当てていた。このガーバーとライダー、両者とも短髪で、ひげの刈り方、片耳だけピアスをしているところなど、ちょうど鏡に映った姿のようだ。ガーバーが黒人でライダーが白人だから、ポジとネガの関係にも見える。
この映画見ていて、「サブウェイ・パニック」というのを思い出したが、調べてみると「サブウェイ・パニック」のリメイクとのこと。「サブウェイ・パニック」は、冒頭、日本人見学者を案内するウォルター・マッソーの姿にはじまり、最後、ばっと振り返るウォルター・マッソーのなんともいえない顔で終わる作品だったが、映画全体の雰囲気は非常によく似ている。この「サブウェイ123 激突」は、現代版として実にうまく作り直されていると思った。
デンゼル・ワシントンがおっさんになっていた。役造りというのもあるだろうが、妙にしみじみした気分になった。対してライダーを演じたジョン・トラヴォルタには、まだまだいけるぜといいたくなる輝きを感じた。一時期は顔の輪郭がムーミンみたいになってしまって、中年になったから仕方ないのかなと思ったりしたものだが、今作ではシェイプアップされた印象で、怖い顔の悪役を見せてくれる。顔が面長で、目が上の方でつまっていて、怖い顔ががははと笑うと目元がくしゃっとなって歯が向き出て目立つこの表情、「必死の逃亡者」で悪役をやったハンフリー・ボガートをちょっと思い出しました。トラヴォルタ、いい役者だよ。