大いなる陰謀

DVDで鑑賞。
上院議員がジャーナリストにアフガニスタンでの最新戦略についてリークする。
冒頭、上院議員アーヴィング(トム・クルーズ)が支持率やアフガニスタンの戦況についての資料をめくっている。同じ頃、テレビ局の名前の入ったメモ帳を手にしたジャーナリスト、ロス(メリル・ストリープ)が車に乗っている。そしてまた、別の場所では大学教授マレー(ロバート・レッドフォード)が学生の出席簿を見ていた。
アーヴィングはロスに、アフガニスタンで行われる最新戦略についてリークするつもりだった。そして、その最新戦略にマレーの教え子だった二人の兵士が参加していた。アーヴィングがロスと面会しているそのとき、アフガニスタンでは戦略が開始された
ワシントン、カリフォルニア、アフガニスタンで、各情景が同時進行する。
ワシントンでは、笑顔と社交辞令から入って、徐々にアーヴィングとロスの、言葉の針でツボをつつきながらお互いの腹を探り合うような対話がはじまる。
カリフォルニアでは、マレーがある学生を呼びつけ、学生ローンを免除してもらうために貧しい二人の学生が陸軍に志願したことについて話し始める。
アフガニスタンでは、特殊任務のために山間部に向かったヘリコプターが攻撃を受け、兵士二人が機外に放り出される。その二人がマレーの教え子だった。
泥沼化したアメリカのイラクアフガニスタンでの戦争。それをめぐってワシントンとカリフォルニアでは意見が交わされる。ちょうど、ネット上の政治ブログで書かれるいろいろな見方や思いが整理され、凝縮されて劇中で表現されているように見えた。役者の力、そして会話の流れに合わせて役者の顔にカメラが徐々に近づいていったりする映し方で、語られるテーマがしっかり印象づけられて見る者の心に残る。
上院議員はジャーナリストに言う。イラク アフガン戦争の開戦時のことを覚えているか。きみたちジャーナリストは賛成してたんじゃなかったのか。国民も熱狂的に我々を支持したが、それはマスメディアに鼓舞されたからではなかったのか。
ジャーナリストは、特ダネをリークされたものの、上院議員は何かを企んでいるのではと疑いを持つ。
未来を夢見て戦地に向かった二人の兵士は、孤立して敵に囲まれてしまう。
マレーと話している学生が、大統領選に立候補する人は必ず「私は立候補しない」と言いますよね、というのがおもしろい。
アメリカのイラク戦、アフガン戦の実相を、様々な角度から光を当てて映し出そうとした作品だった。アメリカ側からの見方しか描かれていないが、それはアフガニスタンを見ていないというより、安易に他者をわかったふりをしない謙虚さによるものだと私は思った。
トム・クルーズが快演。メリル・ストリープはさすがに上手く、「ザ・フーの歌を思い出さない?」という台詞がちょっといいかんじで役を引き立ててた。