アメリカの「治安維持法」

 〈問い〉 テロ事件直後にアメリカで施行された「アメリカ愛国法」とは、どんな法律ですか。(埼玉・一読者)

 〈答え〉 「アメリカ愛国法」とは「テロリズムを摘発し阻止するため適切な手段を提供し、アメリカを団結させ強化する法律」の別称で、二〇〇一年十月二十六日に成立しました。同年九月十一日の同時多発テロ事件後、テロへの恐怖心と報復感情があおられ、炭疽(たんそ)菌汚染事件が発生し、アフガニスタン戦争が強行されるなか、異例の短期間で採択されました。

 徹底審議が行われなかったため、テロの定義や、テロ防止措置と市民の自由擁護、プライバシー保護との関連はあいまいにされる一方、連邦捜査局FBI)など捜査当局の権限は大幅に拡大されました。

 愛国法は、テロに関連するとみられる外国人を七日間は司法手続きを経ずに拘束できるようにしました。また、〇五年末までの四年間、容疑者の電話や携帯電話の盗聴、Eメールの傍受を認め、インターネットの使用・通信記録をプロバイダーから入手できるようにし、テロ調査に関連するとみなせば個人情報の入手は裁判所の命令なしにできるようになりました。

 同法の運用面では、イスラム系、中東系の移住者が特に狙い打ちにされ、「ビザ期限切れ」などを理由に七日を超えて長期間拘束されたり、中東出身学生の思想調査が行われ、「人種憎悪」に拍車をかけました。またブッシュ批判や戦争批判をした者を逮捕・尋問の対象にしたり、図書館で特定の本を読んでいる者を調査するといった事例もありました。

 米司法省は現在、テロに限らず「国家安全保障上の利益を脅かす行為を行っていると疑われる米国民」のインターネット閲覧・検索記録やそのEメールの相手を、四十八時間は裁判所の許可なしに監視できるようにする、「国内安全保障強化法」=「第二の愛国法」の制定を狙っています。

 (保)

 〔2003・5・29(木)〕

↓を読むと、先進国の支配層が共謀して治安維持法をよみがえらせようとしているようなのです。
国連の権威を疑え!〜国際機関を利用した治安立法制定の動き 海渡雄一(弁護士)
魚住昭斎藤貴男『いったい、この国はどうなってしまったのか!』(NHK出版 ISBN:4140807830)より、戦前の民政党議員・斎藤隆夫についての部分を引用。

斎藤は日中戦争最中の1940年2月、帝国議会で歴史的な反軍演説をして軍部の猛烈な反発を買い、翌月、衆院議員を除名された。山中恒氏の労作『新聞は戦争を美化せよ!』(小学館)からその斎藤演説の一節を紹介しよう。
「一たび戦争が起こりましたならば、最早問題は正邪曲直の争いではない。徹頭徹尾力の争いであります。強弱の争いである。強者が弱者を征服する。これが戦争である。(中略)弱肉強食の修羅道に向かって猛進する、これが即ち人類の歴史であり、奪うことの出来ない現実であるのであります。この現実を無視して唯徒に聖戦の美名に隠れて、国民的犠牲を閑却し、曰く国際正義、曰く動議外交、曰く共存共栄、曰く世界の平和、かくのごとき雲をつかむような文字を並べ立てて、そうして千載一遇の機会を逸し、国家百年の大計を誤ることがありましたならば、現在の政治家は死しても、その罪を滅ぼすことは出来ない」
(魚住昭斎藤貴男『いったい、この国はどうなってしまったのか!』NHK出版)

意外と口実というか、お題目の定番というのは限られているというかなんというか。
イラクアフガニスタンではテロが続いています。日中戦争もこういうかんじだったのではないかと想像してしまいます。