ロード・トゥ・パーディション

DVDで鑑賞。
組織に追われる身となったギャングが、息子と共に生き延びようとする。
1931年。イリノイ州ロックアイランド。妻と二人の息子を持つマイケル・サリヴァントム・ハンクス)は家庭ではよき父親であったが、アイルランド系マフィアの幹部でもあった。下の息子はまだ無邪気だが、兄のマイケル・Jr(タイラー・ホークリン)は、父親の仕事は一体何なのだろうと気になっている。
マフィアのボス(ポール・ニューマン)は、サリヴァンを信頼していたが、それがボスの息子・コナー(ダニエル・クレイグ)にはおもしろくない。ふとしたきっかけで、サリヴァンを陥れる機会を得たコナーは、組織に邪魔になったサリヴァンが消されるように仕組み、自らサリヴァン宅へ赴き妻と下の息子を殺害する。
危険を察知したサリヴァンは、生き残った長男を連れ逃亡、殺された妻子の仇を討つ計画を立てる。組織は、腕利きの殺し屋(ジュード・ロウ)にサリヴァン親子の後を追わせる。
1930年代のアメリカの風俗を再現した舞台で、なつかしいギャング映画を現在のハリウッドの技術で再演して見せてくれるような作品。マイケル・Jrは物語が好きで、いつも挿絵入りの本を読んでいるのだが、この映画の原作もグラフィック・ノベルだという。禁酒法時代のファッションに身を包んだギャングが、様式にのっとって台詞をやりとりし撃ち合う。残酷描写が実録物のようにどぎつくなることはなく、父と子の物語を主軸にしてテンポよくおはなしが進んでいく。
トム・ハンクスポール・ニューマンがうまいのはもちろんだが、出来の悪いボスの息子を演じたダニエル・クレイグも印象に残る。子供に対しては気さくなお兄さんになれるカジュアルさが、大人の世界では子供っぽいだめな面になってしまうあたりがすごく自然に見えた。ヤクザ的な性質の悪さも顔に出てたし、父親役のポール・ニューマンと目の色が同じなのもいい。
ジュード・ロウの演じた殺し屋は、副業で死体写真を撮影し新聞に売っているのだが、この男が狂気を感じさせる変質性を見せ、ヤクザ世界の中での鬼畜役となっている。マジシャンのようにコインを指で転がす癖があり、それがこの役の特徴となって、鬼畜出現のサインとなるよううまく映像で見せてくれていた。
こういうギャング映画は、日本でなら、着流しのヤクザが出てくる、時代劇の様式を引き継いだ仁侠映画になるのかもしれない。
マイケル・Jrが壁の隙間から見てしまったギャング同士の争いの場面では、覗いている子供の視点から修羅場が捉えられ、全貌は見えないが乱射されたマシンガンと床にばらばら落ちる薬莢の音が生々しい。
サリヴァンによる妻子の仇討ちは、雨の中、ボスが取り巻きを引き連れて車に乗り込もうとするところをサリヴァンが襲撃、効果音は一切なく、音楽が流れる中、マシンガンで撃たれた傘が瞬く間に穴だらけになったり、発砲した際の火花、次々に撃たれて倒れていく男たちの姿が映り、音楽が消えた後、最後に残ったボスにサリヴァンが近づいて止めを刺す場面が、台詞と銃声で締めくくられる。
どぎつくならないよう、いかにも芝居、劇の世界、でも、父と息子の物語はしっかりと描かれた、出来のいいギャング映画だった。