第9地区

DVDで鑑賞。
南アフリカヨハネスブルグに宇宙船が漂着、中にいた異星人が難民として地球に住み着いてしまったことから起こる悲喜劇。
ある日突然、ヨハネスブルグ上空に巨大宇宙船が静止。中には弱り果てた異星人が多数乗っており、宇宙船がまったく動かなくなっていることがわかった。その後、行き場のない異星人をヨハネスブルグにつくった隔離地区「第9地区」に難民として住まわせることになり、MNU(MULTI-NATIONAL UNITED)という超国家機関が管理することになる。
姿形から「エビ」と呼ばれるようになった異星人は、地球の人間から見ると異様な振る舞いをし、付近の住民との間でトラブルも起きる。さらに、彼らは地球人よりも優れた科学技術力を持っており、第9地区で武器も作り始めていた。「エビ」の作った武器は凄まじい威力を発揮するが、「エビ」のDNAを持つ肉体の持ち主でないと使えない。MNUは、彼らが武力を持つことで地球人を脅かす危険を取り除くと共に、「エビ」の武器を地球人のものにするために、第9地区から異星人を立ち退かせ、捜査しようとする。
おはなしの主人公になるのは、第9地区から「エビ」を立ち退かせる作業を指揮することになったMNUの職員・ヴィカス。ヴィカスは部下を率いて第9地区を回っていたとき体調を崩し、その後、自分の身体が「エビ」化していくことに気づく。
ヴィカスは、「エビ」のDNAを持つ人間として、MNUから人体実験に使える肉体と見なされ、追われる立場になってしまう。ヴィカスが逃げ込んだのは第9地区。そこで彼をかくまってくれた「エビ」の親子は、故郷へ帰るため宇宙船を再始動させる装置を密かに作っているところだった。……
筋立てはなつかしのSF、そこに戦争、難民、人種差別、臓器移植など、時事として話題になる社会問題を連想させる場面が取り込まれており、B級SFアクションとしてテンポよく進むおはなしにのっかて観ていると、ニュースで見た様々な事象が頭をよぎったり、劇と重なって強烈に甦ったりしました。
出だしはモンテ・パイソンを思い出させる毒のある笑いを含んだ雰囲気があるんですが、話が展開し、主人公が追われる身になっていくと、だんだん苦しみや悲しみが濃く漂いはじめ、アクションシーンも切迫した緊張感が持続し、最後までだれることなく楽しめました。まるで戦場で手持ちカメラで撮ったような、臨場感溢れる映像が効果的に使われていた。
ニュース番組や、ドキュメンタリー番組の一部を引用する形に仕立てて、SFとしての設定をてきぱきと説明するのもうまい。
最近の特撮ものとしては低予算の部類になるとのことだが、ストーリーや会話、異星人の造形など、発想やアイデアで勝利した作品だと思う。