ザ・ホード 死霊の大群

  • 2008年、フランス
  • 原題:La Horde
  • 監督:ヤニック・ダアン、ベンジャミン・ロシェ
  • 脚本:ヤニック・ダアン、バンジャマン・ロシェ、アルノー・ボルダ、ステファーヌ・モイサキ、ニコラ・プーフェイ
  • 出演:クロード・ペロン、ジャン=ピエール・マルタンス、エリック・エブアニー、オーレリアン・ルコワン、ドゥードゥー・マスタ、アントワーヌ・オッペンハイム、ジョー・プレスティア

DVDで鑑賞。
警官とギャングが取り残された高層アパートがゾンビの大群に包囲される。
刑事がギャングに殺された。復讐心に燃える同僚の警官たちがギャングが棲む高層ビルへ侵入。さびれた一画にある住人がほとんど消えた廃墟のような高層アパートの最上階にギャングのリーダーであるナイジェリア人兄弟が手下と共に潜んでいる。逮捕に踏み込もうとしたときギャングが逆襲、警官たちは捕らえられ、ギャングのアジトであるアパートの一室に引きずり込まれる。
ギャングは警官たちを痛めつけようとする。しかし、そのとき、部屋の外から異様なうなり声が聞こえ、突然ドアが破られ腕が室内に伸びてきた。撃っても撃っても死なない襲撃者、それはゾンビだった。ギャングと警官はゾンビに包囲されたビルから脱出して生き延びるために共闘する破目になる。
死んだ刑事の葬儀の場面から始まるのだが、墓地の景色、参列した人たちのすっきりとおしゃれな服装、同僚の死を悼みながら男女が不倫がどうしたこうしたと会話を交わしていたり、ああフランス映画だなという味わいがあってうれしい。久しぶりに観るフランス映画は、アッパー系にしてダークなグロ味とハードなアクションでぐいぐいひっぱるゾンビ・スプラッターだった。
走るゾンビのおかげでテンションが高いまんま必死の逃亡が続くわけだが、いやいやながらもサバイバルのためにチームを組むことになった警官とギャング、そして飛び入りするベトナム戦争体験者のおっさんらのキャラと会話が絡み合い、役者も皆うまく退屈しない。
ゾンビは人とほとんど変わらない姿だが人間ではないので、正当防衛に必死な人間様によってぐちょんぐちょんにやられてしまうのだが、人のようで人ではないという設定、ちょっとずるいなと思うこともある。特に走るゾンビの場合は動きが人とほとんど差がないせいもあって、ある意味都合のいい敵役、おもちゃのように利用されていると見えることもある。
この映画では、足を撃たれてはいずる元女性のゾンビをギャングたちが取り囲み、あざけりなぶる場面がある。それを見ていたギャングのリーダーである兄弟の兄のほうが怒るんだよね。いっしょになってやってる弟をつかまえて叱るんだ。「そんなことをして楽しいのか。俺たちが祖国で何をされたのか忘れたのか!」って。
作り手の側に、ゾンビものというジャンルがどう観えるかということについての批評的な視点があることが感じられるゾンビ映画になっていた。
廃墟と化したビル、夜中、点滅する廊下の電灯、狭い部屋、暗い迷路を逃げるような状態、闇を一瞬照らす発砲、部屋へ侵入してくるゾンビが頭からすっぽり黒いフクロを被っている、それが血塗れになり、撃っても撃っても男にのしかかり食おうとする様、血糊の色の生々しい質感。アクションはゲーム的なスピード感に溢れ、全体の流れの緩急の間がよく、最後まで調子よくのせられて観終わりました。グロい描写にややエロ味があるのがフランス製スプラッタということなのかな。