旅立ちの時

DVDで鑑賞。
指名手配中の両親と共に逃亡生活を送る少年が自立するまでを描く。
アーサーとアニーは反戦運動をしていた1971年に兵器工場を爆破し、現在も過激派としてFBIから追われている。二人は逃亡生活を送りながら各地で社会運動を続けつつ二人の息子を育てていた。
長男のダニーは高校の音楽教師に才能を認められ、ジュリアードに進学することを勧められる。ダニー自身も音楽の勉強をしたいという希望があった。しかし、同時に両親のことも思いやり、大学へ行くことは無理なのだと考えてもいた。
若き日の意地を貫く両親と、そんな両親を見守るようなたたずまいの長男。子供のほうが老成した印象を与える一家だが、家族の絆は強く、反体制活動をしているのに家族愛だけは何の疑いもなくあたりまえにある家の中の光景。この映画では、地下活動を続ける反体制夫婦がスピルバーグには絶対に描けないであろう安定感のある家庭を築いているのだった。
アニーは息子の未来を摘み取りたくないと、若き日に背を向けた両親に援助を求める。久しぶりに顔をあわせたアニーと父親の会話が、苦くもあたたかく、やはり根源的に親子間に信頼関係があることが伝わってくる。
地下運動を続けながら生きる夫婦の生活形態はおもしろいが、全体にかしこいいい人ばかりが出てくるおはなしになっている。若い頃正義感で行った爆破事件に巻き込まれた守衛が失明しているという事実は重いのだが、この話の中では主人公の過去として語られるにとどまっていた。
アニーを演じたクリスティン・ラーティは、きれいだし芝居もうまいのだが顔が印象に残らない。この映画では適役名演なのだが、顔も名前も忘れそうだ。ダニーを演じたリヴァー・フェニックスは、いまではホアキン・フェニックスのお兄さんといったほうがいいのかな。将来を期待された俳優だったがドラッグで若死にした。あらためてこの映画をDVDで観て思ったのは、リヴァー・フェニックスは横から見ると鼻がちょっと上を向いたかんじ、ダーク・ボガートのお鼻を少女マンガ風に整えたみたいな形状をしていましたね。物静かで我慢強く心優しい少年という、わりとなんぎな役だったと思うんですが、見事に体現し、しかも魅力的に見せてくれていました。ダニーの弟を演じた子役も妙にうまい。冒頭で出てきたワンコもいい味出してました。